合格したら「はい、終わり」じゃない
矢萩: 何はともあれ、こういったSOSを発しない状態で中学受験を乗り切ったのであれば、それはもうそのまま人生の糧になると思います。あのときあれだけ頑張れたんだからこれからもいけるよ、みたいに自信にも繋げることができます。要は一線超えないようにメンタルを保つこと。そこだけ注意すればいい。もし子どものSOSを感じたら即、話を聴く。説得するのではなく、本心に耳を傾ける。SOSをスルーしてしまったのなら、気づいた時点でちゃんと向き合い、対話の中でつらかった過去に意味付けして呪縛を解き、未来に視点を移すことで糧に転じることができます。
安浪:親御さんで、9月ぐらいから心療内科で薬をもらう方は珍しくありません。不眠とかイライラとかですね。「これ更年期でしょうか」って先生に聞いたら、「ストレスですね」と言われたとか。特にお母さんは受験のサポートのために薬を飲んでまでやり過ごそうとするんですよ。自分より中学受験のほうが優位なんですよね。以前、入試の終わったお母様が「娘は素直なので、私が頑張れば何とかなると思っていました。でも、それがいかに傲慢な考え方か、全て終わった今ならわかります」とおっしゃっていました。中学受験ってどこまでも受験生本人のものなんです。たとえ入試までは引っ張っていけたとしても、合格したらはい、終わり、じゃない。この連載で何度も話題に出ているように、熱望校に進学しても、不登校になったり、学校を辞めたりする子もいます。繰り返しになりますが“中学受験で一丁アガリ”じゃないと、常に一歩引いて見ていただきたいと思います。
(構成/教育エディター・江口祐子)
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