自分でも知らない自分が出てくる

安浪:そうですね。親も追い詰められると、先ほど話したように自分でも知らない自分が出てくることがある。極限状態になると、そうなることもあるんだ、ということを知っておくことが大事かと思います。そうしたら、「今の私、それかも」とちょっと客観的に自分を見て、立ち止まれるかもしれない。

矢萩:親がみて、これ以上頑張らせたらまずいな、という状態はわかると思うんです。訳もなく叫ぶようになってしまったとか、攻撃的になったとか、自暴自棄になってしまってしまったとか。何かそういうSOSのサインがあったときにはそれはまず親が気づいて助けてあげないといけない。塾から「この時期はみんな追い詰められるものです」と言われたとしても、「みんなそうだからしょうがない」と思ってしまうとまずいと思います。

矢萩邦彦さん

安浪:やはり親が追い詰められるのは、理想の状態、シンプルに偏差値や点数が届いていない時ですよね。親が偏差値や点数的に厳しいと思っていて、精神的にもつらくなっているのに、子どもに必死さがないのであれば、それは親がまずその志望校を手放すべきでしょうね。あるいは、子どもが必死でもこの成績じゃダメだ、って子ども自身がどんどん自信を失っていくケースもあります。そういうときは、親がいくら「それだけ頑張っているならもう十分だよ」と言ったところで子どもには響かない。そうなると先ほど矢萩さんがおっしゃったように子どもも奇声を発するとか、チックが出るとか、さまざまなSOSを発する子もいます。でもまだSOSを出しているうちはいいほうで、その次の段階まで進むと無反応になってしまうんですよね。

矢萩:ありますね。一度無反応になってしまうと、声がなかなか届かなくなる。自己防衛のために、文字通り心の扉を閉ざしてしまうんですね。

安浪:精神的に追い詰められた時は、あまり家庭だけで解決しようと思わないで、外にSOSを出してほしいです。塾の先生でもいいし今はフリーの相談窓口もいろいろあるし、こういった相談にお寄せいただくのもいいし。ただ、直前期になったらママ友に相談するのはあまりおすすめしません。異性の子どもだったらギリギリいいとしても、同性の子どもがいるママ友はたとえ志望校が全然違ったとしても距離を置いたほうがいいです。子ども同士で仲がいいのは問題ありませんが。

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