スコットランドの六つの人口データベースを用いて43万組の母子を対象とした研究によると、無痛分娩で生まれた赤ちゃんは、生まれて5 分のアプガースコア(※)が7点未満になるリスクが低く、蘇生が必要になったり、特別な治療室に入ったりする可能性も低くなるという結果が出ています[#1]。

 これらの結果を見ると、無痛分娩はお母さんにも赤ちゃんにもいいのかもしれません。

 ただし、この研究結果の見方には注意が必要です。どうしてかというと、これらの研究は「こうだったら、こうなった」という観察をもとにしているだけで、「これが原因で、こうなった」とは言い切れないからです。ほかにも影響している要因があるかもしれないのです。

無痛分娩の懸念点とその解釈

 無痛分娩にも、気をつけなければいけないところがあります。一つは、無痛分娩を受けたお母さんは分娩中に「熱が出やすい」ということです。ある研究によると、無痛分娩を受けたお母さんは、そうでないお母さんに比べて有意に熱が出やすくなります。

 お母さんに熱が出ると、赤ちゃんの健康に影響があるかもしれません。28個の研究を吟味した「システマティックレビュー」という研究手法を用いた方法では、確かに、無痛分娩をすると分娩中にお母さんが発熱して抗生物質を投与される割合が増えていました[#2]。

 しかし、この研究では無痛分娩で生まれた赤ちゃんは、病気になっていないかをより頻繁にチェックされている可能性がありました。この研究では実際に赤ちゃんが感染症にかかりやすくなっているかどうかははっきりわかりませんでした。

 また、子どもの発達への影響を心配する声もあります。

 ある日本で行われた大規模調査によると、無痛分娩で生まれた子は、特に体を動かす能力やコミュニケーション能力において、1歳半の時点で遅れが見られ、コミュニケーション能力への影響は3歳まで続いたそうです[#3]。

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