一見、これは無痛分娩が子どもの発達に悪いように思えますが、この結果の見方には注意が必要です。例えば、無痛分娩を選ぶお母さんは、そうでないお母さんと比べて生活環境や教育レベルが違う可能性があり、それらが子どもの成長に影響しているかもしれないからです。
このように、無痛分娩が子どもの成長に与える影響については、まだ議論が残るのが現状です。研究の方法の違いや、考えられている要因の違い、さらには地域による医療の違いなどが影響している可能性があります。
「無痛分娩は自閉症を増やす」は現時点でウソ
無痛分娩と子どもの自閉症の関係についても議論が続いています。
2020年に発表された研究では、無痛分娩を受けたお母さんから生まれた子は、自閉症になる可能性が高くなるかもしれないと発表して物議を醸しています[#4]。
しかし、この研究はASD(自閉スペクトラム症)の発症リスクに分娩期間、胎児仮死状態、分娩方法などの重要な交絡因子が調整されていないとして、イギリス国立麻酔科医協会やアメリカ麻酔科医協会などの欧米諸国の専門機関から広く批判されています。
一方、2021年に発表されたカナダの大規模研究では、さまざまな要因を細かく考慮した結果、無痛分娩と自閉症の関係はないという結果が出ています[#5]。
また、2022年に発表された複数の研究をまとめた分析でも無痛分娩と自閉症の関連性は一見あったように見えましたが、検討されてない因子が影響している可能性を指摘しています[#6]。
これらの研究結果を踏まえ、無痛分娩が子どもの自閉症を増やすというのは現時点で否定的な意見が強いです。
一方で、これらの研究結果は無痛分娩の安全性をある程度支持するものですが、同時にもっと研究が必要だということも示しています。特に、子どもの長期的な成長への影響については、さらに詳しい研究が求められています。
自分に合った選択をすることが大切
無痛分娩の良いところと気をつけるべきところを見てきましたが、これが正解というものはありません。それぞれの研究結果には限界があり、また人それぞれの状況によって最適な選択は違います。
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