「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。今回は、小4女子のお母さんからのお悩みです。

MENU 「やらねばらない勉強」とは何なのか? 苦手なところからやらされるのは「地獄」 成長実感があると頑張れる 問題ができたかできないか、の前に…

「やらねばらない勉強」とは何なのか?

安浪:まだ4年生ですからね。逆に気分にムラのない4年生がいたらすごいな、と思ってしまいます。このご質問でちょっと気になるのは、「勉強してくれるわけではありません」って書いてらっしゃることですね。やっぱり親御さんのほうが一生懸命になっているんだな、という感じを文面から受けますね。

矢萩:僕はこのご相談のなかの「やらねばならない勉強」というところが気になりました。「やらねばならない勉強」って何なんでしょう。塾の宿題やテスト対策のことを言っているのかもしれませんが、もう少していねいに、その子にとって本当にやらなければいけない勉強は何なのかを考えたほうがいいと思います。

安浪:親御さんからすれば、塾から出されたものがやらねばならない勉強なんでしょうね。なのに、子どもはいつもそれらに積極的に取り組むわけではない。どうしたら……という感じなんだと思います。

矢萩:たとえば、漢字の書き取りが苦手だという相談は最近とても増えています。漢字の読み書きは宿題であるかどうかに関わらず、「無条件でやるものだ」と考えている人もいますが、「これからの時代は読めて変換できればいい」という考えの人もいます。実際日本人の識字率は世界最高レベルですし、逆に教科書レベルの漢字を「ど忘れ」して書けない社会人はものすごく多いです。だから、苦手意識がある状態で無理やり書かせるよりも、とりあえずちゃんと読めて、正しい漢字が選べるようにする。それができるようになったら、書きにもチャレンジしていくという順番のほうが合理的ですし実用的です。無理やり書かせて漢字自体が嫌いになってしまうと、読むのが苦手になってすべての教科に悪影響が考えられますので、それは避けたい。塾が設定した優先順位は個別に最適化されたものではありませんし、時代に合っているわけでもありません。その子にとって必要なことは何か、あるいは本質的な勉強として今やるべきことは何なのかを考えながらやっていくこともできるはずです。

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矢萩邦彦
中学受験塾塾長 矢萩邦彦

やはぎ・くにひこ/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

安浪京子
中学受験専門カウンセラー/算数教育家 安浪京子

やすなみ・きょうこ/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(ダイヤモンド社)。オンラインサイト「中学受験カフェ」主宰。

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