というわけで、彼らの活動は毎年9月に開催される文化祭にターゲットが絞られている。鉄道好きな中学受験生たちの目を輝かせて、志望校に駒東を選んでもらい、将来的に仲間に加わってもらうことが活動の最大のモチベーションだと幹部メンバーは口をそろえる。模型班と装飾班に分かれて、1年をかけて準備する。

 文化祭の展示には、毎年踏襲される道順がある。まず受付で、合格祈願の切符が渡される。次に、運転シミュレーターを体験。そして目玉の「6畳模型」。毎週火曜と金曜の部活の時間の大半は、これをつくるために費やしている。

 巨大な模型だが、全体の制作工程表のようなものは存在せず、各自が割り振られたパーツをマイペースに制作している。非効率ではあるが、工程表のようなものをつくろうという話には決してならない。「義務」や「仕事」にはしたくないからだ。

「6畳模型」の次は、鉄道写真コンテスト。来場者は好きな写真に票を投じることができる。最後に、発車メロディーの操作体験。駅にある発車メロディーのボタンと同じものを押して、好きな駅の発車メロディーを聞くことができる。鉄道ファンの小学生からはこれが大好評なのだとか。

模型を作る作業中の様子

「鉄道を楽しむため」の旅をじっくり味わう

 各展示をつなぐ経路には、合宿で訪れた地方路線の説明が展示されている。合宿の行き先は5年周期で決まっている。24年度は北海道。そのあとは、中国地方、東北、九州、四国と続く。異学年で4〜5人の班に分かれて、それぞれの班長が決めたルートを行く。

 修学旅行と何が違うのかと思ってしまうが、話を聞いてみるとまるで違う。鉄道を楽しむことに主眼が置かれているので、乗っている間、お互いにほとんどおしゃべりはしないそうだ。もちろんカードゲームに興じたりもしない。それぞれ、車窓を眺めたり、音を聞いたり、写真を撮ったりする。

 合宿の引率以外は顧問もほぼノータッチ。部としての目下の課題は夏休み期間中の作業への参加者が少ないことだが、「それも、もう、出てきてくれる人だけでやればいっかなーと思ってます」と部長。徹底してマイペースでゆるいのだ。それでこそオタクの本道という気もする。インタビューが終わると、部長は中学生の隣に腰掛けて、さりげなく模型の着色のコツを教えていた。

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