「森の中のレールの上をマウンテンバイクで走るレールマウンテンバイクなんてどう?」
「レールの上を行くって、なんか嫌だなあ、人生観として。行き先は自分で決めたい」
いやいや、そもそも鉄道ってレールの上を行くものではないか……。
「このまえ東武ワールドスクウェアに行ったんだけど、人間のクオリティーがすごく低かった」
模型職人たちの目は厳しい。その厳しさが、彼らの作品のクオリティーを支えている。
顧問の中澤さんも輪に加わっているが、完全にため口だ。
「そういえば、スタバのメロンの飲んだ? 早くしないとなくなるよ」
「スマホの修理屋さんに行ったんだけど、最初に出てきた男性店員の説明がうますぎて、これ、このまま話を聞いていたらだまされるやつだと思って、怖くなって帰ってきちゃった。せっかく頑張ってくれたのに、ごめんなさい、って感じ」
もはやまったく鉄道に関係ない。ただの放課後のおしゃべりと化していた。
部活の名称からもわかるとおり、多くの学校の鉄研と違うのは、活動が模型づくりに特化していること。「他校の鉄道オタクの人たちの会話は全然理解できません!」と部員たちは笑う。鉄道好きというより、アニメのような世界観を模型で再現することが好きなのだ。
そもそも正確にいえば、部活でもない。白梅清修には部活という概念がなく、代わりに地域で活躍する「プロ」から指導を受ける「エリアコラボレーション」という課外活動がある。鉄道模型デザイン班もその一環であり、ときどき鉄道模型のプロが指導に来てくれる。
文化系の活動の中にある圧倒的な「体育系」感
活動日は特に決まっておらず、「そろそろ集まったほうがよくね?」みたいな感じで声をかけ合っている。「計画性がないから、最後のほうはつらい思いをするんです」。でも妥協はしたくない。夏休みには毎日朝から夕方まで学校にこもって作業する。
勝負にこだわるムードは体育科教員の中澤さんがつくりあげた部分が大きい。
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