「切羽詰まってくると部員同士の意見がぶつかることもあります。つい先日も、モジュール部門の設計に不備があることが発覚し、結局、路線変更を決断しました。部内の雰囲気がなんだか悪くなってしまって、班長として気まずかったです……」と、副部長が苦笑いしながら告白する。

もの作りや旅行の楽しみにひかれて女子も入部

 趣味の道具を集めた隠れ家のような部室は、一畳レイアウト部門班の作業場でもある。別の教室では、モジュール部門班とHO車輌部門班とJAM班のメンバーが、それぞれ割り振られた担当作業を黙々とこなしていた。角材やプラスチックの板が無造作に置かれている。鉄道模型のどういう部分を、どういう素材を使ってどのようにつくるかは、学校ごとにさまざまな手法が受け継がれているらしい。

「10月の学園祭が終わると、みんな無気力な状態になります」と笑うのは、さきほど部室で一畳部門班を取り仕切っていた女子部員。女子部員は2人いる。いずれも、ものをつくるのが好きで、1人は美術部と迷い、もう1人は電子技術研究部と迷ったけれど、鉄研を選んだ。模型をつくるだけでなく、いろいろな楽しみがあることが決め手だった。

 芝浦工大附属に限らず、鉄研の合宿は運動部の合宿とはわけが違う。地方まで遠出して、乗ってみたかった鉄道に乗り、車窓を楽しみ、写真を撮り、音をとり、駅弁や各地の名産品を味わう。

 鉄道の魅力は何か。部長に聞いてみた。「旅情ですね。僕は乗り鉄(乗るのが好きな鉄道ファン)なので……」

 高1の女子部員2人が笑顔でハキハキと質問に答えるのに対して、高2の男子の部長と副部長ははにかみながら木訥と答えてくれた。インタビュー後、部長と副部長は、「これ、やってみますか?」と、本物の運転台での操作に誘ってくれた。言葉数は少ないが、目尻のほほ笑みが、鉄道愛を雄弁に物語っていた。

 顧問の小川賢一郎さんは、基本的に部員の活動に口を出さない。コンテストに出展する以上、目標は最優秀賞だが、あくまでも生徒たちが自分たちのやりたいことをやりたいように取り組んだ結果でなければならないと肝に銘じている。

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