私立中高一貫校の文化祭展示のなかで、特に中学受験生たちから人気が高いのがいわゆる鉄研(鉄道研究部、鉄道研究会)だ。しかし普段の放課後の部活の時間を見る機会はなかなかない。そこで今回、教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が三つの学校の鉄研の普段の様子をのぞきにいった。「偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2025」(朝日新聞出版)から紹介しよう。

MENU 【芝浦工業大学附属】まるで鉄道博物館!?な常設展示 本物のSLも運転台も座席もある 歴史をひもとけばわかる鉄道との深いつながり もの作りや旅行の楽しみにひかれて女子も入部 【白梅清修】2番じゃダメ!必勝の体育会系だけど普段の議論は脱線の連続!? おしゃべりの中から想像を広げ、案出し 文化系の活動の中にある圧倒的な「体育系」感 【駒場東邦】あえて模型コンテストには出ない。義務や競争としてやりたくないから コンテストに出るか、否か自分たちで判断 「鉄道を楽しむため」の旅をじっくり味わう

【芝浦工業大学附属】まるで鉄道博物館!?な常設展示 本物のSLも運転台も座席もある

【芝浦工業大学附属中学高等学校】

 巨大なタワマンが見下ろす人工芝のグラウンドの脇に、本物のSLが展示されている。正門から校舎に入るとすぐ右手には、まるで鉄道博物館のような展示スペースがある。数々の年代物の鉄道関連グッズや、本物の運転台で操作できる鉄道模型、なんと本物の車両座席までが並んでいる。鉄研部員に限らず、生徒たちはいつでもそれらに触れられるし、一般にも公開されている。

 入学したばかりの中1男子が、目を輝かせて運転台に座っていた。

「鉄道好きなの?」

「はい! これがあるからこの学校を選びました」

 鉄道ファン垂涎(すいぜん)のそんな環境を誇るのが、芝浦工業大学附属中学高等学校(以下、芝浦工大附属)。なぜ、校舎のいちばん目立つところに鉄道展示なのか。学校の生い立ちに理由がある。

歴史をひもとけばわかる鉄道との深いつながり

 1922年、建学当初の校名は「東京鐵道中学」だった。小学校を卒業してすぐに旧国鉄(現在のJR)で働く勤労少年たちに、中等教育(現在の中学・高校にあたる教育段階)の機会を与える目的でつくられた。つまり、もともと鉄道に縁が深い学校なのだ。

 平日は週5日、夏休みは1日6時間を限度にほぼ毎日活動する。なかなかハードである。

 なぜそんなにハードなのか。芝浦工大附属の鉄研は、「全国高等学校鉄道模型コンテスト」のみならず、社会人が中心となって参加する「国際鉄道模型コンベンション(以下、JAM)」にも毎年出展しているからだ。いずれも8月に開催される。2023年度の鉄道模型コンテストでは、モジュール部門、一畳レイアウト部門、HO車輌部門の全部門で理事長特別賞を受賞した。

次のページへいろいろな楽しみがあることが鉄研を選んだ決め手
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おおたとしまさ
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