――たんぱく質の不足による健康への影響を教えてください。

 たんぱく質といえば筋肉を作るというイメージが強いかもしれませんが、それだけではありません。体内に入ったたんぱく質はアミノ酸に分解されて、免疫細胞や抗体の原料になります。そのため、たんぱく質が慢性的に不足すると、からだの成長に影響したり、感染症にかかりやすくなったりする可能性があります。

 また、たんぱく質は神経伝達物質の原料でもあります。“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンや、“やる気ホルモン”と呼ばれるドーパミンなどが不足すると、メンタル面にも大きな影響を与えるのではないか、という研究も増えてきました。

 ドイツのリューベック大学は、とてもユニークな論文を発表しています。あるゲームをしたところ、たんぱく質の多い朝食を取った人は他人に対して優しい態度をとり、炭水化物の多い朝食を取った人は他人に厳しい態度をとったというのです(※4)。これは子育てをしている中で、気になる結果ですよね。まだまだ解明されていないことの多い領域ですが、たんぱく質は積極的に取ってほしい栄養素です。

――日々の食事の中で、子どもにたんぱく質を上手に与える方法はありますか。

 たんぱく質は、料理の手間がかかることが多いんですよね。粉末状のプロテインなども市販されていますが、食品から取ったたんぱく質と同じはたらきをするかどうかは議論のあるところです。

 現実的には、手軽な加工食品に頼りながら、なんとか栄養バランスをとっていただければと思います。本当は鮭(さけ)の焼き魚にしたいところを、忙しい時は鮭フレークにするなどでも大丈夫です。鮭フレークを混ぜたご飯で小さなおにぎりを作り、子どものおやつにしてはいかがでしょうか。あるいは、かまぼこや魚肉ソーセージなど、手軽に食べられるたんぱく質も有効に活用してほしいですね。

(構成/越膳綾子)

※1 https://www.jikei.ac.jp/news/pdf/press_release_20230605.pdf
※2 Itoh M, Tomio J, Toyokawa S, Tamura M, Isojima T, Kitanaka S, Kobayashi Y. Vitamina  D-Deficient  Rickets  in  Japan. Glob  Pediatr  Health.  2017  Jun 1:4:2333794X17711342.  doi: 10.1177/2333794X17711342.  PMID: 28607944;  PMCID: PMC5456026.
※3 Vitamin D status and COVID-19 severity https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9082083/
※4 Strang S, Hoeber C, Uhl O, Koletzko B, Münte TF, Lehnert H, Dolan RJ, Schmid SM, Park SQ. Impact of nutrition on social decision making. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Jun 20;114(25):6510-6514. doi: 10.1073/pnas.1620245114. Epub 2017 Jun 12. PMID: 28607064; PMCID: PMC5488927.

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