子どもの脳を効率よく刺激してくれるのは、想像力です。子どもが本やデジタルメディアで情報に接した後は、これを消化するプロセス、つまり、自分だけの想像力を広げる時間がなければなりません。

重要なのは技術よりアイデア

 イギリスの小学校には、「ショー・アンド・テル(show and tell)」の時間が毎日あります。生徒たちはそこで新しい物や経験について話し、トピックをよりよく表現するために小道具を準備したりします。興味を深めていく絶好の機会です。

 オックスフォード大学の美術学部で学長を務めている私の夫は、韓国の学生は技術ばかり追求していると言います。夫によると、美術は技術ではなく哲学です。たとえば、ポップアートの先駆者アンディ・ウォーホルは、作業室を工場になぞらえ、アートワーカーと呼ぶ作業者に作品を作らせることで、新しい美術分野であるポップアートを実践しました。今やすべての分野において、重要なのは技術よりアイデアです。やや誇張して言うなら、アイデアが90%、技術は10%です。

 新しいアイデアを具体化する力を今教えられなければ、子どもは実際に未来に必要なものを学習から得ることができなくなります。アイデアは、短期的な訓練で出るものではありません。ゆっくり進める長期戦ととらえるべきです。

 たとえば、数学的マインドとは、数学の問題をすらすら解く能力ではなく、数学的な論理力を生きる上で活用できる力です。問題集は数学的マインドではなく、数学問題解答能力を育てる教材です。そのため、問題集に慣れている子どもは、少しでも定型問題から外れると苦戦を強いられます。問題を解く公式は、試験を受けるとやがて忘れられてしまいます。子どもの未来にとって重要なのは、「スキルラーニング」ではなく「マインドセッティング」なのです。

オックスフォード式「勉強感覚」の育て方 頭のよさは10歳までに決まる

チョ・ジウン,北野 博己

オックスフォード式「勉強感覚」の育て方 頭のよさは10歳までに決まる
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チョ・ジウン
チョ・ジウン

英国オックスフォード大学東洋学部教授。児童学と言語学を用いて子どもたちが言葉を学ぶ過程を研究している。オックスフォード大学東洋学部では入試面接官として、毎年多くの優秀な学生を分析してきた。最近は人工知能時代の言語教育について研究している。

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