こうした場合、「おうち英語」にかけた努力のわりに子どもの英語が伸びないときなどに、平常心で子どもに接するのが難しくなることがあります。力を入れれば入れるほど、子どもに対する期待値も高くなるからです。

「おうち英語」と「子どもとの交流」どちらが大事か

 母親が時間と資源を子どもに投資する教育では、子どもは母親を、成果を出さなければならない投資家とみなすようになるかもしれません。母親の投資が無駄ではなかったと示そうとする過程で、親子の関係がこじれる危険性も大いにあります。

 母親は、自分のせいで子どもは英語が苦手になるかもしれない、もっと自分が英語を勉強すべきだろうかと心配になります。次のおうち授業のために、本や映像を選ぶのに悩んだりもします。成果があまり出ないと、何か子どもに問題があるのではないかと不安を感じます。

 子どもの英語教育には母親がすべての責任を負う、などと思わないでください。子どもにとって親は話し相手であり、同等の立場で影響し合える人、人生のガイドです。そして何よりも子どもの情緒発達のために、家庭は家族全員にとって安らげる場所であるべきです。塾や自習室にしてはいけません。

 一般的に「おうち英語」には、子どもが幼稚園に行く前や、寝る前などの空き時間が使われます。家族全員が一緒に過ごす時間が絶対的に足りない状況で、子どもと話せる貴重な時間さえ英語教育に割かれる状況は、何とも残念です。「おうち英語」と「子どもとの交流」の二者択一なら、後者を逃してはいけません。

 日常的に母語と英語を混ぜて使い、文法的に厳密にならず自然に遊ぶようにコミュニケーションするのはよいでしょう。しかし、親と子の関係が先生と生徒の関係になってしまったら、子どもは親に対して当然抱くべき、安心感を抱けなくなります。

オックスフォード式「勉強感覚」の育て方 頭のよさは10歳までに決まる

チョ・ジウン,北野 博己

オックスフォード式「勉強感覚」の育て方 頭のよさは10歳までに決まる
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チョ・ジウン
チョ・ジウン

英国オックスフォード大学東洋学部教授。児童学と言語学を用いて子どもたちが言葉を学ぶ過程を研究している。オックスフォード大学東洋学部では入試面接官として、毎年多くの優秀な学生を分析してきた。最近は人工知能時代の言語教育について研究している。

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