春山 落ちてくるのではないかというくらい、すごい量の星ですよね。こうした星空も、こどものときに見せてあげたいという気持ちがあります。

中村 東京で見る星と全然違いますね。

 でも、自然と触れ合うには広大な自然のあるところに行かなければならないわけではないと思っています。ビルだらけの東京にも自然はあります。それを「自然がない」というのは、そこにある自然が見えていないだけなのではないでしょうか。

春山 先生は東京・四谷のお生まれですね。四谷というと、今はすごく都会ですが、先生がこどもの頃はどんなところだったのですか。

中村 今のようにビルがたくさんあるわけではなくて、ごく普通の住宅街でした。私たちの遊び場は、迎賓館や神宮外苑、それから赤坂見附のホテルニューオータニのあたりの原っぱでした。今もニューオータニの端のあたりに大きな松があるのですが、この前、こどもの頃に一緒に遊んでいた友だちが、「僕がつけた傷跡はまだ残っているはずだ」と言っていました。

春山 東京も普段意識しないだけで、自然はあります。

中村 たとえ都会の真ん中でも、小さい子にとっては、自然はいくらでもある。こどもと一緒に街を歩いていると、必ずダンゴムシを見つけるでしょう。あれ不思議ですね。大人はなかなか見つけられません。こどもは、道端にいるダンゴムシやその辺に生えている雑草のような小さな自然があれば、それで十分なのだと思います。だって、大人になってからこどもの頃に遊んでいた公園に行くと、あれ、こんなに小さかった?と思いませんか。

春山 え、ここ?という(笑)。

中村 そう。こどもの目線では、もっと大きく感じていたのね。つまり、自然を体験するのに都会だから駄目ということはないと思います。ただ東京はあまりに人工的にし過ぎてしまい高層マンションはこどもを育てる場所とは思いませんけれど。

なぜ少子化対策でこどもは増えないのか

中村 最近、中国の人口が14億人から85万人減った、これで労働人口が減る、経済成長率が落ちる、大変だといって大騒ぎしていますね。でも、赤ちゃんが生まれるというのは、そういう問題ではないでしょう、と私は思います。

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