作家・岸田奈美が語る、母の一番好きなところ　「ようそんなに喜べるなぁ…と感心するくらい本気で感動する」

真逆の性格だからこそ補い合える母と私

――岸田さんは亡くなられたお父さんとすごく似ているそうですが、お母さんと似ていると感じる部分はありますか？

　いや～、似てないですね。ギャグセンスだけは岸田家、全員一緒なんですよ。家族みんな、中川家さんが好きで、オバちゃんのものまねとか、なんでも笑いに変えてしまう“大阪の下町の笑い”みたいな感覚を全員が持ってるんです。　

　でも、性格はまったく違う。真逆です。私は飽きやすくて、人間関係をつくるのもヘタの極地。テンションが高かったり低かったり安定してなくて、それが恥ずかしくて同じ人に2回会えないくらいなんです。

　逆におかんは人間関係をつくるのがうまくて、近所でもすごく愛されている人気者です。明るいし、誰にでも優しくて、聞き上手でよう気がつくし、飽きっぽくもなく根気強くて……。でも真逆の関係性だからこそ、補い合えている感じはありますね。

　 父と母は、それでうまくいってた。だから弟のことも育ててこられたと思うんですよ。母は心配性だし、落ち込みやすい性格です。悩んで悩んで動き出せないのが母なら、私と父は思い切りがよくて、現状に不満があったらとにかく動きまわって、結果、隕石にぶち当たるみたいな突拍子もないことをやってしまう。で、口から出まかせも言います。

　父が言ってたのは「良太はな、たぶん、人類が滅亡せんために生まれてきてん。染色体の数が1本多いってことは、もしかしたら、俺らと同じ病気にかかりにくかったり、宇宙人が攻めてきたときに生き残れる人材かもしれへん。良太は人類の希望であり刺客やから、桃太郎を育ててんのと一緒やと思え」と。

　わけわからんでしょ（笑）

　母が安定を望んでも、人生、今まであった足場が急になくなることもある。そしたら父が現状を爆発させるような新しいことを見つけてきて、安定、爆発、安定、爆発を交互にやってきたのが岸田家なんですけど、私が大きくなるにつれて、どんどん私が父化してきて、爆発を担うようになってますね。私と父は、ほんまに似てるんですよ、気質が。