車いすの母とダウン症の弟、認知症の祖母――。そんな家族との日々をつづった自伝的エッセイが多くの人の心を掴んでいる作家の岸田奈美さん。反抗期だった中学、高校生のときにはちょうどいい距離で寄り添い、安心感をくれたという母・ひろ実さんは、車いすユーザーとなった今も、愛されキャラで周囲を和ませてくれているそうです。さまざまに変化する家族の日々とお母さんとの変わらない関係性、そしてお母さんの一番好きなところについて、岸田さんに聞いてみました。※前編<岸田奈美が語る「絶対に否定しない」母の子育て 「私にもダウン症の弟にも『あんたが一番大事やで』の 二枚舌外交」 >から続く

MENU 反抗期、車の中で会話する時間を作ってくれた 真逆の性格だからこそ補い合える母と私 感心するほど「受け取り上手」な母 子どもは家族の犠牲になる母を見たくないもの

反抗期、車の中で会話する時間を作ってくれた

――岸田さんはしっかり反抗期があったようですが、その期間はいかがでした?

 高校時代は不登校というか、2カ月ぐらい学校行けない時期がありました。なんかしんどくて……。たぶん、父が亡くなったショックも引きずってたと思うんですけど、その期間は母とめっちゃケンカしてましたね。

 母は不登校が怖いんです。「学校に行かな、あんたの将来どうなるかわからんで」みたいな。 顔を合わすとその話になるから、お互いイライラして、家の中だとケンカしまくってしまう。そこで母が編み出したのが、買い物とか車でどこかに行く用事をつくって、その道中に話をする時間を持つ、という方法でした。

 車の中だと話題っていっぱいあるんですよ。流れてくるラジオの音楽とか、通り過ぎる景色を眺めながら「あ、ユニクロできてるやん」とか「あの回転寿司、おいしくないよな」とか、どうでもいい話をしているうちに、ちょっとずつちゃんと話せるようになってきて。

 最近、(教育評論家の)尾木ママと一緒にテレビに出演しているので、尾木ママに聞いたら「めっちゃいいのよ、それ」と教えてもらいました。

「共視」といって、人は同じ高さで同じ景色を見ることで、仲間だと思って安心する効果があるそうです。向かい合ってしまうとお互いの視線に緊張したり、どう見られてるのか自意識も出てくる。本当に真剣な話をするときや、特に思春期の親子が話をするときは、向かい合わないほうがいいときもある。

 確かに助手席での母との会話は、安心感があったのを覚えています。

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大道絵里子
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