おすすめポイント

『しんぱいなことがありすぎます!』(工藤純子 作/吉田尚令 絵/金の星社 刊)

 教科書を忘れて泣いたり、消しゴムを忘れて隣の子に借りてケンカになったり、そんなクラスメイトたちを見て、絶対に忘れ物をしたくないと思うももは、真面目で何事にも慎重なタイプ。一方、忘れ物をしてみんなの前で叱られても笑っているかずまくんは、楽天的でお調子者。そんな対照的な2人のやりとりや描写が楽しい幼年童話です。

 ももは、国語の授業で音読をするのが苦手。家ではスラスラ読めるのに、みんなの前では緊張してつっかえてしまいます。それなのに、かずまくんは教科書を持って帰っていなくても、歌うように楽しく読み上げ、とっても上手です。どうして? かずまくんは宿題を忘れて怒られても平気な顔で笑っていたり、たし算の問題を独自解釈で解いたり、ももにとってはちょっぴり変で不思議な存在です。

 おはなしの後半、川のコイを見ようとしたももが思いがけず大変なことになってしまい、頭の中は心配事でいっぱいに。ももにとっては大問題なのですが、あらぬ方向へと心配事がふくらんでいく妄想には思わずクスリとしてしまいます。いまにも泣き出しそうなももに、持ち前の明るさで寄り添い、助けてくれるかずまくん。かずまくんの考え方や行動は理解できなくても、かずまくんの良いところがももにも伝染して、最後は一緒に笑い合えます。かずまくんの真似をしてみたら、なんだか心が軽くなったもも。自分とは違うタイプのお友だちと交わることの醍醐味が、このおはなしには詰まっています。

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