中学受験をするときに一つの物差しとなる「偏差値」。この偏差値は、高校受験や大学受験と同じものと考えていいのでしょうか。保護者が知っておきたい、偏差値への向き合い方とは。中学受験に詳しい森上教育研究所所長の森上展安さんに、中学受験における「偏差値」についてうかがいました。
【図】中学受験の「偏差値50」は高校受験とこんなに違う!中学受験と高校・大学受験は、同じようには比較できない
――中学受験の偏差値と高校受験・大学受験の偏差値は、同じ基準で考えてもいいですか。
中学受験と高校受験とでは、受ける数、つまり母数が全然違いますので、同じようには比較できません。中学受験率は伸びているとはいえ、首都圏でも小学6年生の約20%程度しかいません。全国で見れば約10%程度です。しかも、成績上位層の多い中学受験者の平均ですから、例えば「偏差値50」は全小学生からみるとかなり「上位層」になります。
一方、中学生のほとんどが高校に進学する現在、ほとんどの生徒が高校受験のための模試を受けています。ですから、高校受験における「偏差値50」は、成績上位層から下位層まで含んだ全中学生のなかの平均です。大学受験の偏差値も同様で、大学受験率は高校生の約60%にもなります。高校受験や大学受験の偏差値は母数が圧倒的に多く、さまざまな生徒がいる中での平均になりますので、中学受験の「偏差値50」とは性質がだいぶ異なります。
また、高校受験や大学受験の偏差値は、レベルの高い中学受験者の偏差値よりは高く出る傾向があります。ときどき親御さんのなかで、中学受験の偏差値の概念をよく知らず、「偏差値50の学校に行くなんて!」という方もいらっしゃると聞きますが、親自身によるかつての高校受験や大学受験の経験から「偏差値50は低い」という考え方は、今の中学受験に持ち込むのは誤りといえます。
――低学年、中学年のうちから偏差値に注目していったらいいでしょうか。
中学受験が盛んになって、通塾の低年齢化も進んでいます。小3、小4くらいでも、塾の「組分けテスト」などで偏差値と向き合うことが増えています。
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