トレーニングをしても、効果が見られない場合もあります。

「その場合は矯正器具を使って顎の成長を促す治療があります。顎を成長させるとともに、きれいな歯並び、かみ合わせを作っていくことも治療に含まれます」

 と林歯科医師。

 子どもの矯正治療には、乳歯と永久歯が混在する時期におこなう「早期治療(第1期治療)」と永久歯が生えそろってからおこなう「本格治療(第2期治療)」があります。

「早期治療では、薄いプレートに拡大ネジ(スクリュー)を埋め込み、そのネジを回すことで顎を広げ、歯列の並ぶ場所を作る矯正器具を使うことが多いです」

 永久歯が生えそろう12歳くらいからは、ワイヤを使ったり、マウスピースを使う本格的な矯正が可能です。なお、早期治療は土台を整え、本格治療にスムーズに移行することを目的に行われます。

「ただ、早期治療については積極的にすすめる歯科医師と、必要はないという歯科医師と意見がわかれます。実際、早期治療により、本格治療をしなくてもすめば理想的ですが、そうはいかないことも多いのです。また、早期治療で歯並びがきれいになっても、『もっときれいにしたい』と本格治療を希望する親御さんもいます。このため、『永久歯が生えそろってから治療をすればいい』という考え方も出てくるわけです」

 歯科医師によって意見が異なる理由はほかにもあります。

「矯正治療については、研究途上の部分が多いためです。学術的に理論が確立していないものは、わかりやすくいえば複数の考え方があるということで、どれが正解とはいえないのです」

歯科医院で話を聞くときのポイント

 だからこそ林歯科医師は、矯正治療を検討する場合には、「複数の歯科医院で意見を聞いたうえで、選んでほしい。当院も3軒目、4軒目としてやってくる方が多いです」と話します。林医師に歯科医院で話を聞く際のポイントを挙げてもらいました。

●矯正治療の専門医に話を聞くことがのぞましい

(日本矯正歯科学会専門医など)

●早期治療をすすめられた場合、そのメリットや必要性について確認する

(早期治療により、本格治療をしなくてすむ。したとしても永久歯を抜かなくてすむ、などのメリットがある場合も。また、乳歯が抜けないまま、永久歯が異常な位置から顔を出している場合など、早急に矯正治療が必要な場合もある)

●早期治療を受ける場合、子どもの負担がどのくらいかを聞く

(装置の使用は1日にどのくらいの時間装着するのか、通院の頻度など。子どもが嫌がる治療は受けさせるべきではない)

●治療のゴールを確認する

(本格治療が終わった後の歯並び、かみ合わせのイメージを確認する)

●本格治療でうまくいかなかった場合、どうするかの確認もする

(反対咬合の場合、成長期後に外科的な手術が検討される場合がある。その場合、適切な医療機関に紹介してくれるのか、など)

●トータルの費用(矯正治療は基本、自費であるため、高額の費用がかかる)

*  *  *

「矯正治療はその時期で最適な方法がありますので、慌てて考える必要はありません。口腔機能発達不全症についても、気がついた時期から、できることはたくさんあります。心配しすぎず、まずはできることから親子で取り組んでほしいですね」

(取材・文/狩生聖子)

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