「溶連菌感染症」は子どもに長らく流行している病気です。どのような特徴があるのでしょうか。最近話題になっている「人食いバクテリア」(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)との関わりは。川崎医科大学小児科学特任教授の中野貴司医師に聞きました。
【図】人食いバクテリア(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)の患者数推移はこちら溶連菌感染症とは?
Q 溶連菌感染症とはどのような病気ですか?
「A群溶血性レンサ球菌」という細菌が原因で起こる感染症で、幼児から小学生、中学生まで幅広い層に発症します。細菌が感染する場所やあらわれる症状はさまざまです。子どもに多いのはのどに感染・発症する咽頭炎(A群溶血性レンサ球菌咽頭〈いんとう〉炎)です。このほか皮膚に感染して起こる「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」(とびひ)や、発疹など全身に症状があらわれる「猩紅熱(しょうこうねつ)」があります。ここでは、最も患者数の多い咽頭炎について、紹介します。
Q 咽頭炎ではどのような症状が特徴ですか?
のどの痛みと38~39度の高熱が特徴です。口蓋扁桃(こうがいへんとう)という、のどの奥の左右にあるくるみ大の組織(扁桃腺)に白苔(はくたい)と呼ばれる白い膿(うみ)がついていたり、周囲の軟らかい粘膜である軟口蓋(なんこうがい)に赤い発疹(粘膜疹)が見られます。また、首やあごの下、耳の後ろなどにあるリンパ節に炎症が起こり、痛みが出ることもあります。
どうやって感染するの?
Q どのように感染するのでしょうか?
主な感染ルートは「飛沫(ひまつ)感染」と「接触感染」です。コロナ以前は春先に流行することが多かった病気ですが、2023年の春から現在(24年6月)まで、流行が長く続いています。一時期、溶連菌感染症かどうかを調べる迅速診断キットが不足していることがニュースになりましたが、今でも足りない地域はあるようです。
Q のどの痛みは通常の風邪と比べて、かなりひどいのですか?
そうともいえません。「ものすごく痛む」という子もいれば、そうでない子もいます。子どもの訴えだけでは、普通の風邪とは区別はできません。
医療機関では視診によって、のどをよく診察します。小児科医であれば、これだけで診断はほぼつきますが、確定診断にはA群溶血性レンサ球菌の抗原(病原体の表面に存在する分子または分子構造)の有無を調べる、「迅速診断キット」による検査が必要になります。
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