ゲームやYouTubeに夢中でつい夜更かししてしまう子や、中学受験の勉強を夜遅くまでしている子……。「日本の子どもは世界一、眠れていない」と指摘するのは、睡眠の専門医で、日本睡眠学会、日本睡眠協会の両理事長を務める久留米大学学長の内村直尚先生です。内村先生に、子どもの睡眠不足の問題点についてお聞きしました。

MENU 日本の子どもの睡眠はヨーロッパ諸国と比べ1~2時間少ない ブルーライトはカフェインと似た覚醒作用がある 睡眠不足が原因なのに「発達障害」と診断されることも

日本の子どもの睡眠はヨーロッパ諸国と比べ1~2時間少ない

――「日本人は世界で一番、睡眠時間が短い」というのは本当でしょうか。

 はい、本当です。OECD(経済協力開発機構)による2021年版の調査によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分。33カ国の中で最も短く、全体平均の8時間28分よりも1時間も少なくなっています。その傾向は子どもたちにも表れていて、青少年(9~18歳)を対象とした調査でも、日本人の平日の睡眠時間はヨーロッパ諸国と比べて1~2時間少なくなっています。日本の子どもは世界で一番眠れていないのです。これは非常に大きな問題です。

OECD(経済協力開発機構)による2021年版の33カ国を対象にした睡眠調査 厚生労働省 e-健康づくりネット「良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと」から抜粋 https://e-kennet.mhlw.go.jp/tools_sleep/
9~18歳を対象とした睡眠時間の国別比較 資料提供/内村直尚医師

――日本の子どもたちの睡眠時間が短い理由は。

 まず、「日本人は睡眠に対する意識が低い」というのがあります。大人自身もそうですが、子どもに対しても、「早く寝かせよう」という意識が低い。幼い子どもは夜8時ごろまでにかならず就寝させる海外とは異なり、日本では、3歳児でも夜10時以降まで起きている子が多くいます。夜遅くまで子どもを外に連れ出したり、遅くまで塾で勉強させたりすることに問題意識をもたない大人も多い印象です。そうした文化的背景が、子どもの睡眠不足の一つの原因になっています。

ブルーライトはカフェインと似た覚醒作用がある

――YouTubeやゲームも要因の一つかもしれませんね。

 いまの日本の子どもは、スマートフォンやタブレットなどで遅くまでSNSやゲーム、動画視聴をし、明るい光を浴び続けています。子どもは大人よりも光の影響を受けやすいもの。デジタルデバイス画面から発せられる光やLED照明の光は「ブルーライト」と呼ばれますが、カフェインに似た覚醒作用があって、夜の眠りを妨げます。その影響で、「夜になると眠くなる」という睡眠サイクルが崩れ、寝つきが悪くなり、良い睡眠がとれず、睡眠不足で朝の寝起きも悪い……という悪循環が生まれやすいのです。

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