中学受験で第1志望に届かずとも、それを糧にし、成長した生徒もたくさんいます。都内で中学受験指導塾「應修会」を主宰する茂山起龍さんは、受験後も教え子と交流を続けるなかで、中学受験生たちのその後の人生を見つめ続けています。AERA with Kids+の連載「中学受験、その先に」。今回は、友人と同じ学校を受験し、一人だけ不合格だった女子生徒のエピソードから、中学に入学したあとに大切なものについて、考えます。
【写真】息子の中学受験を直前で「断念」した人気タレントはこの人「第1志望不合格」から人生が開ける
――中学受験で第1志望校に手が届くのは、3、4人に一人と言われています。第1志望ではなかったけれど進学先が想像以上にマッチした例として、印象に残っている生徒はいますか。
10年ほど前、塾に通っていた女子生徒のことを思い出します。彼女が第1志望としていたのは、近年とくに人気のある都心の伝統女子校でした。彼女のほかに、同学年の4人が第1志望としていたのですが、5人中、彼女一人だけ合格を手にすることができなかったんです。5人は“べったりとした仲良しグループ”というわけではありませんでしたが、同じ塾で頑張ってきた仲ですし、なんとなく同じ中学を受験することはわかっていたようでした。
受験勉強を進めている間も黙々と頑張っていましたが、算数と理科がいまひとつ伸びきらず、厳しい形での受験でした。だんだんと周りが合格して抜けていくなか、「なんで受からないの」とつらい思いを吐露しながら最後まで受け続けましたが、第1志望校から合格をいただくことはありませんでした。
結局、その彼女は、偏差値のポイントは下がるものの、同じく伝統ある女子校に進むことに。その学校は、芸術面における課外活動が豊富に用意されていて、能や歌舞伎を鑑賞しに行くこともあれば、放課後には華道や茶道のプログラムもあり、伝統的な文化・芸能を大切にしている学校です。一般的には保守的と思われているようですが、精神的に自立した生徒が多く、僕自身とても好きな学校の一つです。
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