中高一貫校を選ぶ際、偏差値だけを物差しとすると、「大学の進学実績はどうか」というところばかりに目が向けられがちです。けれど、子どものアイデンティティーが形成される大切なこの時期に、「何をして、どう過ごすか」を考えると、やはり偏差値だけを見ていては限界がある。高校受験を気にしなくていい環境のなかで、先の彼女のように自ら進んでやってみたことが自分のなかにうまくハマったら、それは自信や夢にもつながると思います。

学校のパンフレットには載っていない価値を見つける

――中学に入学したら、まずは学校生活を楽しむことですね。

 そうですね。中学受験が終わったら、大学受験を見据えてすぐに塾を探す、という人も多いかもしれませんが、まずはその学校でできること、やってみたいことを発見してほしいと思っています。ひとまず落ち着いて学校生活を楽しんでから、自分には何が足りないかを見極めたうえで必要なものがあるのなら足していけばいい。海外留学制度や英語教育の充実といった、学校のパンフレットに載っていることだけでなく、言語化できない学校の価値を見つけることからまずは始めてほしい、と僕は思います。

 今回紹介した女子生徒のように、その子に響く価値はその子でないと見つけられません。そして、子どもが人生をどう切り開いていくかは大人には測りえません。だから、保護者の皆さんには偏差値の数値として出ていない部分も大切にしてほしいですし、そのためには、たとえ第1志望が不合格であっても、がっかりするようなそぶりを見せず、子どもが歩む道を温かく見守り応援してほしい。そう強く思います。

(聞き手/古谷ゆう子)

【連載初回】「偏差値が高い学校」に入ったほうが子どもは幸せなのか 中学受験の人気塾長がみた、卒業生たちの“その後”
著者 開く閉じる
茂山起龍
中学受験塾「應修会」塾長 茂山起龍

しげやま・きりゅう/1986年生まれ。中学受験を経験し、大学附属校に入学。大学在学中から個別指導塾、大手進学塾などで中学受験指導に携わる。会社経営の傍ら、2011年、東京・西葛西に中学受験指導塾「應修会」を開校。自らも教壇に立って指導を行う。中学2年、小学6年の男子の父。X(旧Twitter)での中学受験についての発信も人気で、フォロワーは1万人を超える。X: @kiryushigeyama

1 2 3 4