――結果的に自分に合った学校に進学し、そこで夢を見つけていったのですね。
伝統芸能を大切にする校風と、彼女のアーティスティックな一面がうまくマッチしたのだと思います。結果論でしかありませんが、第1志望校ではなく、進学した学校でその後を方向づける出合いがあり、そして何より彼女自身が進学先で頑張った、ということが大きいと思います。与えられた環境、与えられたものを自分のなかにグッと取り込み、思いきり楽しんだ結果、今が成立していると思います。
彼女はうちの塾を卒業した後もちょくちょく遊びに来てくれていて、彼女自身、就職先が決まったときに「私、第1志望校はダメだったけれど、あの学校に行って本当に良かった。多分第1志望校に進んでいたら今自分はこうなっていなかったと思う。わからないけれどね。でも本当にあの学校で過ごしたから今があると思っている」と口にしていました。中学受験で悔しい思いはしたけれど、進学先で充実した日々を送り、そこで目指す職業にも出合えた。「そのスタート地点に立ち会えて良かったな」という気持ちが僕にもあります。
中学・高校の6年間をどう生きるか
――13歳から18歳までの6年間は、人生においても大切な時期です。
人生の大きな区切りを点で捉えるとするならば、「中学受験の次は大学受験だ」と親は思いがちです。ですが、その点と点との間をつなぐ「線」の部分を大切にしてほしいと僕は思います。極端な言い方にはなりますが、英語や数学は塾や個人でも学べるけれど、美術や音楽、体育や技術といった科目は中学・高校の学校生活以外で触れるのはなかなか難しい。大人になると時間もなくなってきますしね。部活動もそう。子どもたちの貴重な6年間を重要視し、副教科や部活も大切にしている学校を僕は好きですし、そこに時間を割けるのが中学受験をする大きな意味でもあると感じています。
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