何で悪いのか、自覚ができない

ーー宿題はどうでしたか?

沖田:宿題を忘れると、昔の先生、手が出るんですよ。そこで「殴られないためには、どうしたらいいんだろう?」と考えたら、「頭のいい子に、何かをあげて写してもらおう」という結論になっちゃったんです。「50円あげるから答えを書いて」って。等価交換っていうのか、「お金を出せば、何かを返してもらえる」ということだけは分かっていたので。家が中華料理店だったので、残り物のチャーハンを持って行ったこともあります。

ーー学校で問題になりませんでしたか?

沖田:なりましたよ。チャーハン事件は、本当にめちゃくちゃ怒られて。でもそのときは、「どうしてこんなに怒られるんだろう? 家の物を持って行ってあげただけなのに」と思ったんですよね。自分が何で悪いのか、ということの自覚がまったくできなかったんです。

ーー忘れ物と宿題以外に、小学校生活で困ったことはありますか?

沖田:私、小学校3年生のときに「かん黙」になったことがあって。

ーーまったくしゃべれない、ということですね。

沖田:しゃべれなくなると、動きも止まるんです。立ったまま地蔵のように固まっている感じです。それで3時間、授業が止まったり。

ーー3時間、立ったままで。

沖田:先生は私に、「宿題を忘れてごめんなさい」と言わせたかったんですね。でも、私にはそんな先生の意図がまったく分からなかった。「どうしてだろう?」と思いながらぼーっと立っていました。1時間が過ぎて、キンコンカンコンってチャイムが鳴って、休み時間が終わって、次の時間に入って。「連帯責任」ということで、他の生徒も私がしゃべるまで席から動いてはダメ、休み時間でも外に出たらダメとなるんですよ。

ーー教室全体が、シーンとしたまま3時間ですか。

給食になると「わー、カレーだ!」

沖田:でも、ここが私の悪いクセというか、「これ、一生は続かないな」と思ったんです。さすがに給食の時間になったら先生もやめるだろうから、それまで待っていようって。最終的には、びんたを食らって、先生とクラスメイトに「宿題を忘れてきて、迷惑かけてごめんなさい」と言わされました。これが、お決まりのパターンでしたね。

ーーえ、そんなことが頻繁にあったんですか?

沖田:だって、「何で宿題忘れてきたの?」という質問に答えられないんですよ。「あー、忘れました」と答えると、また「何で?」と。繰り返し尋ねられても、それ以上答えることがないので黙って固まっちゃう。よくありましたね。

 ただ、給食になると楽しくなって、「わー、カレーだ!」とか言いながら、がつがつ食べているものだから、みんなぽかーんとしていました。「さっきまで3時間も授業止めていたやつが、何でおかわりとか、牛乳早飲みとかできるんだ?」って、きっと思っていたはずです。すごく変な生き物を見るような、そういう感じはありましたね。

沖田さんの漫画『こりずに毎日やらかしてます。発達障害漫画家の日常』(ぶんか社)より
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