勉強だけをさせられている子どもは無気力になりやすい、という傾向もあります。早い段階からテレビ禁止、ネット禁止、スマホ禁止にしているご家庭もありますが、それは「親にとって意味があるもの」=「成績を上げること」になっているから。勉強だけをさせていると、好奇心の芽を摘み取ってしまう危険があります。本来、好奇心の強い子は「洋楽が好きだから、英語を学びたい」「プログラミングをしたいから三角関数を学びたい」と、“学ぶ理由”がどんどん広がっていく。それが勉強一色になると、学びもつまらなくなる。子どもが興味を持つことに意味があるかどうかは親には判定できない、という謙虚さは持っていたほうがいい。「興味を持つ」という力を失わせないことも大切です。
中学・高校の6年間で大学受験の準備ができる
どんな事柄にも陰と陽はありますが、「陽」の部分をうまく利用できれば、中学受験をするメリットはあると感じます。僕自身は中学受験をした後、中3、高1の時にバンド活動に目覚め、「東京に行きたい」「親を説得するためには東大しかない」という思いから東大を目指しました。天才肌ではないですが、中高ひと続きで6年あるので、それだけ大学受験の準備に時間をかけることができた。高校の数ⅡBがとにかく苦手でしたが、中高一貫ならカリキュラム進度が速く、高2の時点で高校の内容が終わり、以降は苦手科目に十分な時間をかけられるので、なんとか間に合う、という状況にはありました。いま家庭教師として生徒たちと向き合っていても、中3から高1にかけて一気に難しくなる数学に時間をかけられるメリットは大きいと感じます。
たとえば、野球に熱中していたとします。県立高校から甲子園に行くことも、プロ野球選手になることもできますが、施設面でも、同じ目標を持つ仲間がいるという環境面でも、強豪校を目指したほうが有利ですよね。そうした点でも、中学受験をして中高一貫校に行く意味はあると僕は思っています。
(取材・文/古谷ゆう子)
朝日新聞出版