その大変さに耐え切るには、計算力や読解力だけでなく「体力」も必要。一コマ50分の授業を集中して聞く体力は、小さい時からの体を使った遊びやスポーツのなかで養われます。頭がいい子は、人が3時間かけてやることを1時間でやりつつ、人の3倍頑張るわけですから、体力や集中力は無視できません。

 習い事をするなら、何か一つでもいいので達成してからやめてほしいと思います。目標を一つでも達成し、「よっしゃ!」という感覚を味わってほしい。そうして、小4くらいまでの間に小さなハードルを越える練習をしてきた子どもたちは、自己肯定感が育まれ、自ら勉強に向かっていけるようになります。このハードルは高すぎてはいけません。ちょっと頑張ったら手が届くという高さをいくつも乗り越えていくことで、「頑張ったらなんとかなった」という挫折と復活の経験を増やしていくことが大切です。

 自走することを覚えた子どもは、中学入学後、勉強が難しくなって壁に突き当たったとしても、ちゃんと自ら「やる」という選択をしている。そんな実感があります。

親は子の「興味を持つ力」を失わせない

 中学受験は無策で臨めるようなものではありませんからサポートは必要ですが、親御さんが自分ごととして捉える必要はありません。時々、模試の結果をクリックする手が震えている保護者もいらっしゃいますが、成績が悪かった際に一緒に落ち込むようでは前へ進めませんし、子どもも力むようになります。それよりも、「この期間、あまり勉強していなかったね」と過程にフォーカスするなり、「次はミスに気をつけよう」と具体的に励ますなり、メンター的な立ち位置に身を置くほうがうまくいっているご家庭が多いです。

「今後を考えると、ここで成績が落ちたほうがいい」「一度挫折してほしい」と子どもを俯瞰して見られるお母様に出会ったことがあり、印象に残っています。そのかたは、リビングで勉強する子どもの真横には座らず、視野の片隅に入れている状態を保っていました。何かあれば、駆けつけられる距離にいる。それが本当の意味で「放任」と言うのだと思います。

次のページへ勉強だけをさせられている子どもは無気力になりやすい
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