安浪:あとは親がどこまでサポートしてあげるか、ということですね。昔、入試直前の1か月弱だけ、スポット的に教えていた男の子がいるんです。ずっとサッカーと勉強の両立を頑張っていた子で、個別指導に通っていました。最後のフォローとして私が家庭教師として入ったんですが、そのお母さんは「お金は出すからあとは全部自分でやりなさい」というタイプで、子どもの勉強に一切関知しない。解いた過去問がどこにあるかわからないし、実際に数問解かせてみると、お子さんも勉強のやり方がわかっていないな、という感じはしました。でもいろいろ話してみると、とても賢い子だったんです。何を言っても「あ、そういうことか」と即理解して、きちんとアウトプットできる。少しでも親御さんのサポートがあればもっと彼の学力は伸びたのに、と正直思いました。やはり中学受験はある程度親のサポートが必要です。でも大学受験では、その子の能力に見合った難関大学に合格しました。

矢萩:親が適切に関わるのは大事ですが、別の方向にいってしまうと問題なわけで……。ちょっとリアルなお話をしますと、僕の母親は、塾代などの教育費がいくらかかっているかを全部リストアップして、ファイルにして、ことあるごとに僕に見せてきたんですね。「あなたにどれだけお金がかかっているのかわかっているんでしょうね」と。その結果、僕はどうなったかというと18歳で家出をして、そこから先、母親と交流したことはほとんどないという状況でございます(笑)。

安浪:矢萩さんは今こうやってご活躍しているし、引きこもりや不登校になった人でも大人になってからこんなに立派にやっています、という話もよく出ているけれど、そうじゃない人もいますしね。

矢萩:そうなんです。僕はたまたま復活したタイプですが、同じような環境にいて未だに引きこもってる子も僕はたくさん見てきています。だからそれをなんとかケアしたいっていうのが僕が今やってる活動の真ん中にあります。家族との関係を犠牲にしてまで合格を取りにいくものなのか、大事なことは何なのか、ということをちゃんと考えてほしい。そもそも幸せになるために中学受験を始めたはずなので。

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