■部分点の判断も難しい
矢萩:僕も「この答えなら何点ですか?」という質問をよく受けるんですけれど、「この学校の先生なら7点、僕なら9点あげるかな?」というような答えにならざるを得ないんです。それを親御さんが判断するのは難しいです。あと、このお母さまは答案を噛み砕いてお子さんに説明している、と書いていますが、これも少し問題があって……。というのも問題文をまず問題作成者が解釈して問題と模範解答をつくり、その解答をお母さんが解釈して伝え、お母さんの解釈をお子さんが聞いて解釈しなきゃいけないっていう、もう伝言ゲームみたいな読解になっている可能性があります。しかも過去問題の場合、問題作成者と模範解答作成者も違ったりします。ですから、読解力というよりも、基礎的な言語能力をつけて自分でダイレクトに解答を読み込めるようになるのが理想です。
安浪:入試が終わった大手塾の入試報告会とかに行くと、国語は今回こういうテーマが多かったみたいな分析をするわけです。年によってトレンドは違うのですが、物語文においては「成長」と「絆」がキーワードなんですよね。最近はそこに「他者理解」というものが入ってきてたりしていますが。
矢萩:本来はそういうのは自分で感じるもので、他者に感じろ、って言われて感じるものではないのですけどね。だいたい、主人公が成長しないし、絆もない物語なんてないと思います(笑)。
安浪:ごく稀に何も起こらず成長も絆も他者理解もなく、救いがないまま終わっていくっていう問題を出す学校もあるようです。
矢萩:日記以外のすべての文章は、本来、他者に何かを伝えたいから書かれるわけで、何かメッセージがあるんです。それを問題作成者がどう解釈するか、あるいはしないかによっては、そういう出題もありえますが、それはもう出題者に読解力がないか、トレンドに逆らいたいだけなど、悪意がある場合くらいでしょうね(笑)。
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(構成/教育エディター・江口祐子)