安浪:本当にそうですね。中学入試であれ大学入試であれ、作者の方が「この回答は私が伝えたかったことじゃない!」と言われるのは珍しくないですもんね。

■受験における「読解力」をつけたいなら

矢萩:ですから、受験における「読解力」をつけたいと思うなら、切り取られた文章を読む練習と、出題のパターンを知ることだと思います。だいたいこのような問題が出るよ、ということにまず慣れる。傍線がこういうところに引かれて、こういうことを聞かれがちなんだな、とか、指示語が指し示す内容を聞かれることが多くて、その内容は前に文の中にあることが多いんだな、とかですね。あとは答えの形式です。なぜですか?と聞かれたら、「だから」と答えるとか、これもパターンです。これはスポーツでいうところのルールみたいなものだと思います。

安浪:おっしゃる通りで、本当の国語力と受験で問われる国語力というのは違うんです。だからもう入試の国語なんて、そのルールの中で戦うしかないと割り切ることです。そこに文句を言っていてもしかたがない。あと、出題者が自分の感覚でつくっているのではないか、という入試問題を、特に選択問題でちらほら見かけるんですよね。問題をつくっている先生と感覚が合う子、相性がいい子はナチュラルに正解するけれど、そうでない子はどうやっても正解できない。

矢萩:たしかに、そう感じられる入試問題もありますね。まあ、「適性検査」だと思えば、先生の感性や自分との相性を知ることができる手段だと割り切ることもできます。

安浪:私自身は4年生の間は点数はあまり気にしなくていいと思っているんです。それよりも問題をまずは読み通せることがとにかく大事です。塾のテキストでは具体的な読解技術はだいたい5年生から学んでいくように作られています。だからこそ4年生のうちは読書習慣がある子のほうが強い。読書習慣があまりなく、かつ幼い子は、そもそも問題文が最後まで読めないことも珍しくないんです。何を言っているかわからないとか、問題が何を聞いているのかもわからない、というケースも多いです。ですから4年生のうちは親子で問題を読んでみる、つまり音読がとにかく大事です。文章を読めない子は、音読がきちんとできません。文章を変なところで切ったり、途中からずれた行を読んでも意味を追っていないから気がつかないし、単語や助詞を違うふうに読んだりします。

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