伊藤さんいわく、子どもには「人」「自分」「体」「言葉」「数」「絵」「音楽」「感覚」「自然」という「九つの知能」がある。子どもの行動をこれらの知能に照らし合わせて見ると、「今はこの分野に熱中しているのか」と理解できるようになる。伊藤さんはこう話す。

「ぼうっとしていて『早くしなさい』と言われている子が、実はほかの子たちを観察し、哲学的な思考をめぐらせている。『九つの知能』をもとに、欠点だと思っていた部分が実はその子の才能なんだと気づくと、子どもの行動にはすべて意味があるのだと理解できるようになり、イライラしなくなります」

 では、家庭内で子ども、特に未就学児の成長に適した環境を作るには、どのような点に留意すればいいのだろうか。伊藤さんは自身の指導経験を踏まえてこう提唱する。

「子どもが今、何に興味を持っているのかを把握し、レベルや成長に応じてそれに関連する道具などをそろえてあげると、集中して取り組み、短期間で一気に習得します。たとえばひらがなを読み始めたら、ひらがな表や練習帳、ノートなどをそろえてあげることは効果的だと思います」

 わが子との関係性については、信じて任せることが重要だ。子どもが「自分でできた」と思えるような距離感のサポートが必要だという。

「どうしても手出しや口出しをして助けたくなるでしょうし、子どもを守って助けてあげなければいけないという意識が強いと思います。ですが、それでは子どもは自立できません。大変そうだな、と思っても、子どもが『手伝って』とか『助けて』と言ってくるまでは、何も言わずに見守るようにしましょう」

 伊藤さんは「みんながリビングルームに集まる家」も成長の条件に挙げる。

「リビングに居場所があると、そこでやりたいことに集中し、家族に質問することもできます。また、スクールでも取り入れているのですが、机を壁に向けて目線の先に何もないように配慮すると、より集中して物事に取り組むようになります」

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