受験者層の変化に伴い、ボリュームゾーンの子どもたちを受け入れる学校側も柔軟に対応しているそうです。
「偏差値50前後の私立中高一貫校では、グローバルを意識して英語教育に力を入れたり、外部の人に講演会を依頼したり、将来設計に注力したりと、さまざまな内部改革が行われています。別の見方をすると、それは学校側の生き残り作戦でもあるでしょう。自校の評判を高めなければ存続できないという考えが、各学校にあるように感じます。もちろん、当然ながら大学進学実績も重視されています」
■ボリュームゾーンにとって理想の中学受験とは
西村先生が考えるボリュームゾーンの子どもと家庭にとっての理想的な中学受験とは、どのような受験なのでしょうか。
「目的は『僕は頑張れる子だ』『私はできる子だ』という自己肯定感をもてる状態にすること。これがボリュームゾーンにおいて一番重要だと思います。問題の取捨選択、スケジューリングの工夫、親子関係、特に声かけに注意することで十分に実現可能です」
親のかかわりで何より大事なのは、子どもを認めること。西村先生は、「努力を認める効果」をもっと知るべきだと語ります。
「自分で自分を認められる状況にならないと、人からの叱咤激励を受け入れることができません。自分の力を信じるには、認められた経験が不可欠なのです。子どもは自分で自分に判断を下せる年齢ではないので、人からの評価で変化します。だからこそ、努力のプロセスを認めてあげることが重要だといえるでしょう。努力が認められていると感じるなかでの叱咤激励は効果的なので、ぜひ認める過程を大切にしてください」
西村先生は「勉強一色にならないバランスのよい生活や親の声かけなどを意識して、子どもの自己肯定感を大切にすること」が理想的な中学受験だといいます。親のこうした日々の心がけが、ボリュームゾーンの子にとってよい受験につながるようです。親が必死になるあまり、子どものゆるい部分ばかりが目についたり、周りと比べたりしてしまう――。そんなときは、ひと呼吸置いて「今日も頑張ってるね」と声をかけてみると、いい風向きになるのかもしれません。
(東山令)