「かろうじて合格できたのは、ラストスパートで塾の先生が奮起させてくださったおかげです。『お母さん、あきらめないでください! 私が合格させます。本人が嫌がってもいいから、無理にでも冬季講習に連れてきてください。あとはこちらでなんとかします』と言ってくださったんです。先生の力強い言葉を信じて嫌がる息子をなんとか連れて行き、すべてを託しました」
講師たちのサポートは手厚く、B君の勉強意識にも変化が。わからなかった問題がクリアになることに一番の喜びを感じ、「楽しい」という気持ちに変わっていったそうです。そして、B君が「今の状況ではまずい」と自覚し、過去問に取り組み始めたのは入試4日前でした。
「正直、今さらかとは思いましたが、自覚が芽生えたのはうれしかったです。ラストスパートの伸び幅は大きく、入試の2日前まで成長を実感し続けました。塾の合格実績にも載らないような子のために、熱心に対応していただいて心苦しかったです。最難関向けの塾はもっと営利的なイメージでしたが、実際はまったくそんなことはありませんでした。息子のやる気を引き出してくださった先生に、感謝の気持ちでいっぱいです」
■努力嫌いにみえる子、本当は…
Aさん・B君親子の受験について、「名門指導会」代表のプロ家庭教師、西村則康先生はこのように語ります。
「マイペースな子、大人の目に努力嫌いに映る子は、実は自分なりに努力しています。むしろ、自分で調整する能力が高い子です。自分の気力がどのくらい続くのかということを、なんとなくわかっているので、その範囲内で努力する子が多い。つまり、自分のことをよく理解しているからこそ、受験勉強をコツコツと積み上げ続けることができるのです。量は少なくても継続できる力は、中学校に入ってから大きな武器になりますね」
B君のような子は決してやる気がないのではなく、自分の目標を強く持っているそうです。
「B君のような子に『お友達に負けて悔しくないの?』と聞くと『全然』と答えるでしょう。マイペースな子の目標に多いのは、人に勝つことではなく、今の自分の状態より少し上を目指すこと。その気持ちは表現せずとも、『このくらいの勉強をしてこのくらいになりたい』という意識をかなり強く持っています。周りからは動じていないようにみえるけれど、本人の脳内で緻密に少しずつ上を目指し続けているのです」
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