■社会で求められている力を問う入試
探究学習に詳しい「知窓学舎」塾長の矢萩邦彦さんも、新タイプ入試の広がりを評価する。
「従来型の教科入試は、詰め込みをして知識を蓄えないと点数が効率良く伸びないシステムになっています。しかし、いま社会で求められているのは、思考力や表現力。そういう力を問われる入試が増えるのは、歓迎すべきことだと思います」
一方、広がることに伴う課題もあると、矢萩さんは指摘する。
「新しいタイプの入試には、残念ながら志願者を集めるためだけの奇をてらったものがあるのも事実です。アドミッションポリシー(学校による入学者の受け入れ方針)と合致している、あるいはその入試で入った生徒を伸ばすような、教育システムが確立されているような学校は評価できます」
しかし、新タイプ入試をはじめ、入試問題の作成を外部に委託する学校もあるという。
「本来、入試が果たす役割は、選抜だけではありません。中高一貫なら、その入試で選抜した生徒を6年間教育していくわけです。先生方が忙しいのは分かりますが、そういう状況も含め、自ら入試問題が作れない学校や先生に、果たしてその生徒たちを指導していくことができるのでしょうか」(矢萩さん)
■公立中高一貫校の練習として受験
私学の新タイプ入試は、09年度、宝仙理数インターが、公立中高一貫校で行われる適性検査と類似した「適性検査型」入試を導入したのが始まりだ。その後、徐々に参入する学校が増加した。
「公立中高一貫校と私立を併願する受験生が増えたことも、全体の志願者が増加した原因です。22年度は1万8000人が公立中高一貫校を受検し、そのうちの約6500人が私立と併願しています」(北さん)
明治大学理工学部建築学科1年の安西里織さん(19)は、宝仙理数インターの卒業生。中高一貫校の都立大泉中を受検したが残念ながら不合格。練習として、本番前に受けたのが宝仙理数インターの適性検査型入試だった。
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