「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。今回は「どうしても偏差値が気になってしまう」というお母さんからのご質問です。

MENU ■不当に偏差値が低い学校もある ■偏差値を高くしたいのは悪いことではない ■偏差値は塾が操作するものだから絶対じゃない

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安浪:この連載のタイトル自体が「『偏差値とらわれない』中学受験相談室」じゃないですか。とらわれるのが当たり前だからこそ、あえてこのタイトルをつけているのですから、これは至極当たり前の悩みだと思います。さて、われわれは偏差値表をざっくりしたゾーンで見ています。大体のゾーンを頭に置いた上で、「ここはどう?」と個別の学校を提案することはありますが、正直、1~3ポイントぐらいの差は全く気にしていません。完全に誤差の範囲ですから。でも保護者の方たちって気になるんですよね。こっちは偏差値55ですけどこっちは57なんです、っていうような相談をよく受けます。

矢萩:そうなんですよね。そもそも偏差値って塾が作り出したものですから。

■不当に偏差値が低い学校もある

安浪:今年、女子校から共学にリニューアルした学校の入試が良くも悪くも話題になったじゃないですか。あれは、偏差値は塾や学校の操作によって作り出されることができる、ということがよくわかった事例です。つまり、入試回数を増やして定員を絞り、優秀な子に合格を出せば、結果として見た見た目の偏差値は高くなるんです。逆に個人的に見ていて、不当に偏差値が低いなあ、と思う学校もある訳です。これは塾や模試会社に迎合していない学校ですね。だから、偏差値以上に実力もある学校もあります。

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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