バングラデシュの船の照明器具工場で働くファヒン君。10歳から働き始め、月収は最低賃金の半分だという(写真/清水匡)
バングラデシュの船の照明器具工場で働くファヒン君。10歳から働き始め、月収は最低賃金の半分だという(写真/清水匡)

 それでも彼は「仕事は大変で疲れるけど、幼い時から働き始めればそれだけ技術も身につくし長い間稼げるんだ」と語ってくれた。

 フィリピンでは00年に子どものための国家戦略(Child21)を策定し、貧困からの脱却を目指している。08年には30万世帯の貧困家庭に対して、子ども1人当たり月300ペソ(約650円)に加え、世帯当たり月500ペソの条件付き給付を配布した。これは、最低賃金の11%に相当する。給付世帯数を拡大し、現在はおよそ400万世帯になった。

■コロナ禍が貧困に拍車

 しかし、いまだ1400万人以上の人々が貧困生活を強いられている現実も忘れてはならない。現在は新型コロナウイルスの感染拡大で断続的なロックダウンを繰り返し、貧困層をさらに苦しめている。

 政府からの支援だけでは生活が賄えないため、日本のNPO「国境なき子どもたち」が貧困世帯に食糧や衛生用品を配布するなど、民間の支援に頼らざるを得ない状態が続いている。

 ヨハン君(12)は幼い時に父親を亡くし、その後母親が家を出ていったため祖母に育てられている。午前中、小学校から帰ってきたら野菜売りをしている祖母の手伝いをし、夜遅くなるまでマーケットの清掃をして1日100ペソほど稼ぐ。お金は祖母に渡したり、通学の交通費に使ったり。以前は新年に母親に会うことを楽しみにしていたが、今はそれもかなわない。

 この報告書にある調査は、新型コロナが流行する前に行われた。今後は感染の抑え込みと同時に、各国による社会的保護の取り組みが十分機能しなければ、児童労働者数は大幅に増加することが予想される。

 21年は児童労働撤廃国際年に当たる年でもある。

 児童労働者数の減少と撲滅を進展させるためには、各国の献身的な努力による社会的保護政策が鍵となるだろう。(フォトグラファー・清水匡)

※AERA 2021年9月6日号