紀貫之「土佐日記」の時代に遡る古刹「鹿児神社」の門前を走る。集電装置が当初のビューゲルからZパンタグラフに換装されている。田辺島通~鹿児(撮影/諸河久:2010年3月8日)
紀貫之「土佐日記」の時代に遡る古刹「鹿児神社」の門前を走る。集電装置が当初のビューゲルからZパンタグラフに換装されている。田辺島通~鹿児(撮影/諸河久:2010年3月8日)

 主要機器は廃車された300型高床式単車からの転用だが、当該の321号は1909年製の木造車からの鋼体化改造車だった経緯があり、開業時からの血筋が継承されている。台車は軸距2438mmのブリル21E型高床式単台車を流用。自重8.6トン、定員37(28)名で、エアーブレーキを装備している。

 運行当初は伊野線(はりまや橋~鏡川橋)、桟橋線、後免線で営業運行され、通常運賃で乗車できる復刻車として人気を集めた。後年、週末などに限定の行路で運転された。現在はイベント用になり、グループによる貸切運転にも対応している。

 最後のカットが、BS番組ロケ用の「貸切」運行で後免線(はりまや橋~後免町)を走る「維新號」。沿線の鎮守「鹿児(かこ)神社」の杜を背景にした典雅な一コマ。左端には土佐電開業前の1880年に建立された土佐狛犬が写っている。

■撮影:2012年5月24日

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諸河久

諸河久

諸河 久(もろかわ・ひさし)/1947年生まれ。東京都出身。カメラマン。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。「諸河 久フォト・オフィス」を主宰。公益社団法人「日本写真家協会」会員、「桜門鉄遊会」代表幹事。著書に「オリエント・エクスプレス」(保育社)、「都電の消えた街」(大正出版)「モノクロームの東京都電」(イカロス出版)など。「AERA dot.」での連載のなかから筆者が厳選して1冊にまとめた書籍路面電車がみつめた50年 写真で振り返る東京風情(天夢人)が絶賛発売中。

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