AERA 2023年6月5日号より
AERA 2023年6月5日号より

 トレイサーズのその他費用0.1%が実際に何%となるかは運用開始1年後の決算で判明する。これを超えると運用会社側の“持ち出し”になるので、相当余裕を持って0.1%としているはず。三菱UFJ国際は1年後にトレイサーズの総コストが判明し、それがeMAXIS Slim全世界株式より安ければ値下げするのか?

「個別の投資信託に関しては回答できませんが、信託報酬、その他コストも含めた総経費率と実際のパフォーマンスも含め、eMAXIS Slimより有利なものが出てきたら引き下げも検討します」(三菱UFJ国際投信デジタル・マーケティング部の野尻広明さん)

■値下げの約束は難しい

 では、トレイサーズを運用する日興アセットマネジメントは最安値を目指すのだろうか。

「低価格を目指す努力はいたします。ただ、常に最低水準への値下げを“明確にお約束する”ことは難しい」(商品開発部長の有賀潤一郎さん)

 トレイサーズが信託報酬に占める範囲が、一般的な投資信託より狭いのはなぜか。もちろん“安く見せたい”という意図も無くはないだろうが、どのようなポリシーで運用している?

「当社(日興アセット)が運用する投資信託約230本のうち半分以上がこの方式で、実質主義の考え方で運用しています。コストに関し、引き続きわかりやすく開示して参ります」

 トレイサーズ全世界株式は、信託報酬とその他費用の合計で最大0.15775%とはいえ十分に安い。1年後の決算時にフタを開けたらeMAXIS Slim全世界株式並み、いやそれより安い可能性もある。

 気になるのはトレイサーズ全世界株式の販売会社。5月23日現在でSBI証券のみだ。信託報酬が安い=金融機関の取り分も減るわけで、仕方ない?

「販売会社での取り扱いの難易度が高いことは、承知しています。販売会社100社以上に集まっていただく『商品戦略アカデミー』という情報提供の場でご意見を伺いつつ、こちらからも提案を続けています」

■指数利用料はいくらか

 低コストの投資信託は規模が大きくないと金融機関側の収益として話にならない。今後、トレイサーズ全世界株式の残高が伸びればネット証券などの販売会社側でも“取り扱わざるを得ない”状況になるはずだ。投資家側も「安く、もっと安く!」と求めるばかりでなく、金融機関側の永続的な運用という視点も忘れないようにしたい。

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