コロナ禍で人々の健康に対する意識が高まった。乳酸菌に関する研究が進んでいる(写真:gettyimages)
コロナ禍で人々の健康に対する意識が高まった。乳酸菌に関する研究が進んでいる(写真:gettyimages)

 乳酸菌は「人類にとって最も有益な細菌」ともいわれ、近年、市場が拡大傾向にある。背景には何があるのか。AERA 2023年5月22日号の記事を紹介する。

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「生後間もない子どもがいたので、感染症が心配で、海外でも毎日のように親子で乳酸菌飲料を飲んでいました。周囲でも『子どもに乳酸菌』は当たり前でしたね」

 2020年にコロナ禍で緊急帰国するまで、夫の赴任先の東南アジアで暮らしていた48歳の女性はこう語った。自宅近くに乳酸菌飲料を作る日本企業の工場があり、子連れで工場見学に出掛けたこともある。

 東京都在住の40代男性も、この2年はヨーグルトや乳酸菌飲料、乳酸菌入りサプリなどが自宅に常備されている。2人の子どもは年子で昨年、今年と中学受験が相次いだ。大切な時に新型コロナウイルスやインフルエンザに感染しないようにと、妻の提案で乳酸菌を取るようになった。受験は終わったが、習慣は今でも続いている。

「体に良さそうなことをいろいろやっていたので、乳酸菌のおかげかどうかはわかりませんが、家族全員、風邪一つ引きませんでした」(男性)

■免疫力や睡眠に関心

 乳酸菌とは、ブドウ糖や乳糖などの糖を分解し、乳酸を作り出す微生物の総称だ。この市場が現在、拡大傾向にある。TPCマーケティングリサーチの堀越滉平さんによれば、乳酸菌関連商品の市場規模は21年は前年比0.1%増の7784億円。22年は0.3%増の7805億円の見込みだ。

 乳酸菌といわれれば、すぐにヨーグルトや乳酸菌飲料を思いつくかもしれない。だが、いま、市場拡大を牽引しているのは、健康食品と加工食品だ。カテゴリー別で市場を見ると、前者は横ばい傾向だが、健康食品は前年比8.9%増、加工食品は同6.9%増だった(21年の結果/TPCマーケティングリサーチ調べ)。

「乳酸菌の訴求は、従来は整腸作用や抗肥満が中心でした。最近は多様化し、特に『免疫力向上』『ストレス緩和』『睡眠サポート』といった訴求の商品が、コロナ禍と相まって、売り上げを快調に伸ばしています」(堀越さん)

 21年は、「免疫力向上」が前年比28.5%増、「ストレス緩和」が同29%増、「睡眠サポート」が同50%増だ。人の関心がどこにあるかが見て取れる。

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