Maxine Williams/メタ最高ダイバーシティ責任者。弁護士や俳優の経歴もある。「この髪形は自分でした」と笑顔で語る一面も(撮影/写真映像部・東川哲也)
Maxine Williams/メタ最高ダイバーシティ責任者。弁護士や俳優の経歴もある。「この髪形は自分でした」と笑顔で語る一面も(撮影/写真映像部・東川哲也)

 来年までに社内のマイノリティーの割合を50%以上にすると目標を掲げるメタ。社内の多様性の取り組みを推し進める理由を米本社担当役員に聞いた。AERA 2023年5月15日号の記事を紹介する。

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 2019年、メタ(旧フェイスブック)は、24年までに社内の女性従業員数を2倍、米国ではアフリカ系とヒスパニック系従業員を2倍にすると発表した。なぜ多様性を重視するのか、多様性を取り入れた製品をどう開発しているのか。メタ最高ダイバーシティ責任者のマキシン・ウィリアムズ氏に聞いた。

■少数派としての価値

──マイノリティーの社員を増やす理由を教えてください。

 私たちが目指すゴールは、世界中のあらゆる人々に向けてサービスや製品を提供することです。世界は、異なる文化や背景、言葉や経験を持つ人々によって構成されていますし、同じ民族でも個々の考え方や価値観が違います。多様性を考慮したサービスを開発するため、私たち自身も多様性に富んだ企業になりたいと思っています。

──多様性を考慮した社内の取り組み事例を教えてください。

 社内では、外音を遮断する「クワイエットルーム」が数多くあります。これは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害の社員に向けた部屋です。特性を持つ人は、その人にしかわからない世界観があり、それを私たちは求めています。国連の調べによると 、全世界の人口の15%は何らかの障害があります。非常に大きな割合です。その15%の人口が求めるニーズを、マイノリティーの社員の存在が教えてくれます。

──自身も女性であり、人種的にもマイノリティーですね。

 私は、小さな島国のトリニダード・トバゴ共和国出身で、これまで何度も移民の立場を経験してきました。数多くの壁を乗り越えられたのは、私自身がマイノリティーとしての価値を見いだし、それに対して自信を持ってきたから。メタに入社した社員にも「あなたの多様性をもっと出して」と伝えています。

──多様性を考慮したサービス開発をどう進めていますか。

 実名登録制SNS「フェイスブック」は以前、性別の選択が男性か女性かの二択でしたし、人とのつながりを求める人が使うと思っていたのですが、“ひっそりと”使いたい人もいることを知りました。さまざまな要望に応えることで、多様性を取り入れてきました。今私たちが構築するメタバースも、どういったニーズがあるかを見極め中です。

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