瀧内公美(たきうち・くみ)/1989年生まれ。映画主演作に「由宇子の天秤」など。舞台「夜叉ヶ池」は5月2日から東京・PARCO劇場で上演予定(写真:吉住モータース提供)
瀧内公美(たきうち・くみ)/1989年生まれ。映画主演作に「由宇子の天秤」など。舞台「夜叉ヶ池」は5月2日から東京・PARCO劇場で上演予定(写真:吉住モータース提供)

 日頃、映画に浸る時間がないという人でも、ゴールデンウィークは、なじみのなかったジャンルの作品を手に取ってみるのはどうだろう。俳優・瀧内公美さんが、「明るく笑えて心豊かになる映画」を語る。AERA 2023年5月1-8日合併号の記事を紹介する。

【図】瀧内さんが語る「明るく笑えて心豊かになる映画」がこちら

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 いわゆるハートフルコメディーを多く観ているわけではないのですが、GWという時期に観て心豊かになる作品として思い浮かんだのが、「魔女の宅急便」です。新学期を迎えたり、上京して新生活を迎えたりするなかで、キキと同じような気持ちになる方も多いのではないでしょうか。私自身、コロナ禍が広まり、実家にも帰れない、公園にも行けないという八方ふさがりの状態になったときに再び観て、元気をもらいました。

 若い世代には「シング・ストリート 未来へのうた」をおすすめしたいです。人生は一度きり、青春はいましかないというメッセージがストレートに伝わってくる作品です。家庭環境が複雑な、一見冴えない少年たちがバンドを組み、まずはバンドの真似ごとから始める。作中で「上手にやろうと思うな」というセリフがありますが、これはお芝居に通じるところがあり、とても響きました。一番素敵だな、と感じたのは少年たちがPV(プロモーションビデオ)を撮るシーン。夢があることの素晴らしさ、無謀なことへ挑戦していくことの大切さ。春は、理想と現実のギャップに戸惑ったり、つまずいたりする時期だと思うので、作品のなかで彼らの素直さに出合っていただきたいです。

 個人的な思い入れで言えば、「イカとクジラ」もクスクスと笑えるところがあり、好きな作品です。両親の離婚を子ども目線で描いた作品で「こうした家族の形もあるのか」という気持ちにさせられます。

 ホン・サンス監督の「夜の浜辺でひとり」も面白いですね。主演俳優であるキム・ミニと監督の不倫関係をそのまま物語に投影した作品で、「焦らない、闘わない、無理しない、恋したい」というコピーを見て「わ、自ら宣言している作品なんだ!」と思ったものです(笑)。「人生フルーツ」は、高齢夫婦の姿を追ったドキュメンタリーであり、生きることの美しさが詰まった、心が豊かになる作品です。

 ドラマや映画に出演する際は、境遇が似ているキャラクターが登場する作品を観直すようにしています。いまは、泉鏡花原作の舞台「夜叉ヶ池(やしゃがいけ)」の稽古中で、現代の言葉とはちょっと異なる“言葉の美しさ”を改めて学んでいます。昔の日本映画を観ては「こういう感じだったのだな」と日々発見しているところです。

(構成/ライター・古谷ゆう子)

AERA 2023年5月1ー8日号より
AERA 2023年5月1ー8日号より

■生きることは美しい

○90歳と87歳、二人の人生感じるまま

「人生フルーツ」/伏原健之(2016年)/東海テレビ放送/全国公開&自主上映会開催中

○敵も味方もみな“仲間”人間の温かさ感じる

「シング・ストリート 未来へのうた」/ジョン・カーニー(2016年)/DVD 1257円(税込み)/発売・販売元:ギャガ

「魔女の宅急便」/宮崎駿(1989年)

「アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング」/マーク・シルヴァースタイン、 アビー・コーン(2018年)

「世界中がアイ・ラヴ・ユー」/ウディ・アレン(1996年)

「プラダを着た悪魔」/デヴィッド・フランケル(2006年)

「マイ・ファニー・レディ」/ピーター・ボグダノヴィッチ(2014年)

「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」/スティーヴ・ベンデラック(2007年)

「イカとクジラ」/ノア・バームバック(2005年)

「夜の浜辺でひとり」/ホン・サンス(2017年)

AERA 2023年5月1-8日合併号