
口止め料問題で米国のトランプ前大統領の起訴が秒読みになっていると報道され始めた。
大統領経験者が起訴されれば、米国では前代未聞の事態となる。AERA 2023年4月3日号より紹介する。
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「トランプ氏は、万人と同じく、法廷に召喚されて起立させられることになる。(前大統領とはいえ)何人も法を超越はしない」
アンドリュー・ワイスマン元米連邦検察官は3月22日(米国時間)、ニュース専門局MSNBCに出演し、こう言った。過去に組織犯罪捜査を多く指揮し、昨年からトランプ氏の起訴を予言していた人物だ。
米メディアは20日の週にも、ニューヨークにあるマンハッタン地区検察局がトランプ氏を起訴すると一斉に報じた。
これを受けて、トランプ氏はソーシャルメディアで、
「21日の火曜日にも逮捕される」
と発信し、支持者に抗議を呼びかけた。
■裁判所に爆破予告も
起訴するかどうかは、地区検察官が招集する大陪審が、証拠などを精査し投票で決める。
起訴されれば、出頭して逮捕され、ワイスマン氏が指摘したように出廷することになる。大陪審の招集は22日に予定されていたため、この日に起訴かと大騒ぎになった。
ニューヨークの検察局や裁判所が連なる地域は、警察がバリケードを張り巡らせた。2021年1月6日にワシントンで起きた連邦議会議事堂襲撃事件のように、トランプ支持者が過激な抗議行動に出るのを警戒したためだ。
21日には裁判所に爆破予告があり、ニューヨーク市警が辺りを封鎖、爆破物を捜索する騒ぎとなった。このため、22日の大陪審の招集は延期され、23日以降になったと伝えられている。
検察が捜査していたのは、トランプ氏が長年不倫関係にあった元人気ポルノ女優、ストーミー・ダニエルズさんに渡した口止め料について。
トランプ氏は16年大統領選挙に影響が及ぶのを恐れ、弁護士を通じて彼女に13万ドル(現在のレートで約1700万円)を手渡した。これが選挙戦中の支出について定めた法に抵触するかどうかが焦点の一つとなっている。
■他にも訴追する動き
トランプ氏はこれに対し、
「魔女狩り」
「フェイクニュース」
と反論。自らの逮捕予告をソーシャルメディアで流し、アルファベットの大文字で、
「抗議せよ。国家を取り戻すんだ!」
と書いた。