フィギュアスケート選手 宇野昌磨
フィギュアスケート選手 宇野昌磨

 2022年のフィギュアスケート全日本選手権・男子シングルで5度目の優勝を果たした宇野昌磨選手がAERAに登場。良い演技ができたと思える基準は、支えてくれる人やファンの笑顔だという。AERA 2023年3月27日号から。

【写真】蜷川実花が撮った!AERAの表紙を飾った宇野昌磨はこちら

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「あまり自分の写真は好みじゃなくて。特に笑顔系が苦手なんですよ。スタッフの皆さんが良いなって思ってくれる写真が撮れているといいんですけど」

 撮影を終えたばかりの宇野昌磨に感想を聞いてみた。頭をかきながら答えた。 

 小さな頃の「昌磨くん」が懐かしい。名古屋・大須のスケートリンク。お母さんが見守る中、転んでは立ち上がり、涙を流しながらジャンプの練習をしていた。あの光景が目に浮かぶ。当時指導をしていた山田満知子コーチから、「うちの将来のスターだよ」と紹介されたのが、つい先日のようだ。あの「昌磨くん」がこんなに立派な選手に成長する日が来るとは。見る目のなさを反省してしまう……。

 そのことを伝えると宇野は笑った。

「自分でも驚いています。気づいたらこうなっていたという感じですし、まさかこんなに長くスケートを続けるなんて、3年前とか思っていなかったです」

 もともとは踊るのが好きな選手の印象だったが、今はジャンプが特に光る。

AERA 2023年3月27日より
AERA 2023年3月27日より

「今のルール上、ジャンプを跳ばないことにはやっぱりダメなんですよね。でもフィギュアスケートの魅力の一つは表現力だと思いますし、僕もそれに憧れていた小さな子どもの一人だった。やっぱりそこをおろそかにしたくない。でも競技者としてトップをめざすなら、練習の9割以上はジャンプの練習になりますね」

 そう、本音を打ち明けてくれた。氷上では王者の風格が漂う。演技前、緊張するのかを聞いてみると──。

「それが全然しないんです。最近どんどんひどくなってきていて、全然関係ないことを考えていることもあります。失敗したらみんなどんな反応になるだろうかと思ったり。そんなのばっかりです」

 王者のメンタルを持つ「昌磨くん」がそこにいる。(朝日新聞スポーツ部・坂上武司)

AERA 2023年3月27日号