演じることに苦手意識があったという唐田えりかさん。それでも、自分と向き合い続けた。芸能活動を始めて8年。責任と覚悟が芽生えたという。AERA 2023年3月20日号より紹介する。
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──背筋をしゃんと伸ばして、慎重に言葉を紡ぐ。芸能界に入って8年がたった。
唐田:演技の仕事をはじめたころは、オーディションが苦手でした。「絶対に受からなきゃ」という気持ちが強くて、落ちたときは自分自身に価値がないと思うくらい落ち込むこともありました。
──演技に苦手意識を持ちながらも、20歳で初めてヒロインを演じた「寝ても覚めても」でカンヌ国際映画祭のレッドカーペットを歩いた。
唐田:自分的にも大きいターニングポイントで、そのあたりからちょっとずつオーディションも背負いすぎなくなりました。
■寂しさが押し寄せて
──俳優として様々な役に挑戦するなか、週刊誌報道で役者業からしばらく離れることになった。
唐田:自分と向き合わなければいけない時間がすごく長かったので、向き合うことに対して怖がらなくなったというか……。責任と覚悟を持ってやっていかなければいけないという思いが明確になりました。今の自分が置かれた状態からしても、自分の演技を否定される怖さよりも、目の前の役に集中して挑むんだという覚悟のほうが大きくなった気がします。
──久しぶりに挑んだオーディションで、映画「死体の人」(草苅勲監督)のヒロインを射止めた。役者を志すも、与えられるのは死体役ばかりの主人公のもとに派遣されたデリヘル嬢・加奈を演じる。源氏名の「加奈」と本名「金沢ゆり」のなかで揺れ動く一人の女性の姿を捉えた。
唐田:挑戦的な役ではありました。ただ、何より、ゆりも含めて一人ひとりのことが丁寧に描かれています。登場人物みんなが一生懸命で、どこか笑えるけれど、そこに救われたり。誰が観ても楽しめるって胸を張って言える作品です。
──クランクイン前には、ゆりが暮らすアパートの部屋で一夜を過ごした。
唐田:劇中にあるままの散らかった部屋に泊まったんですけど、夜になると寂しい気持ちが押し寄せてきました。電気をつけていても、一人で暗い部屋にいるような気がして。自分は一人で寂しいと思うことがあっても、それをどう充実させられるか考えるタイプです。でも、「ゆりは恋人がいないと自分が保てない女の子なんじゃないかな」ってそのときにすごく感じたのを覚えています。