LLNLは核融合を引き起こす実験で、注ぎ込んだエネルギーよりも多くのエネルギーを生み出す「ブレークイーブン」を達成した、と発表した(photo アフロ)
LLNLは核融合を引き起こす実験で、注ぎ込んだエネルギーよりも多くのエネルギーを生み出す「ブレークイーブン」を達成した、と発表した(photo アフロ)

 米のローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)は昨年12月、実験施設で太陽の力を再現することに成功した、と発表した。ただ、課題は多い。AERA 2023年1月30日号の記事を紹介する。

【写真】この記事の写真の続きはこちら

*  *  *

 同研究所(カリフォルニア州)は、高出力のレーザー光線を使って、太陽の中と同じような条件を作り、核融合を引き起こす実験をしている。今回は、反応を開始するために注ぎ込んだエネルギーよりも多くのエネルギーを生み出す「ブレークイーブン」と呼ばれる目標を達成したというのだ。記者会見で、米エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官は「ライト兄弟の初飛行に匹敵する、21世紀で最も印象的な科学的業績の一つ」と誇った。

 サッカーグラウンド3面分もあるような巨大な装置で強力なレーザー光線を発生させ、それを直径数ミリほどの標的につめた核融合燃料に照射し、エネルギーを発生させている。1997年に建設が始まった同施設で二十数年がかりの成果だった。

 水素のような軽い原子が二つ合体して、重い原子一つをつくる反応が核融合だ。このとき莫大なエネルギーが生じる。太陽は核融合のエネルギーで輝き続けており、人工的にそれを地上で起こそうというものだが、1億度以上の高温・高圧の状態を保つのが難しく、開発に時間がかかっている。

■どんなエネルギー

 燃料(重水素と三重水素)1グラムから生じる核融合エネルギーは、石油8トンの燃焼エネルギーに相当する。

 現在の原発は、ウランなど重い原子に中性子を当てて、核分裂が起きるときに生じるエネルギーを使っている。核分裂の場合は、ウラン燃料1グラムは、石油1.8トンに相当。核融合は、核分裂よりさらに大きなエネルギーが得られることになる。

 核融合エネルギーの利点として

(1)燃料になるリチウムが海水中に豊富に存在する

(2)原理的に暴走しないので、現在の原子炉より安全性が高い

(3)二酸化炭素が発生しない

(4)現在の原発が生み出すような、高レベルの放射性廃棄物が生じない(中レベルの廃棄物は生じる)

 などとPRされている。

次のページ