河野 弘(かわの・ひろし)/1962年生まれ。85年入社。本社経営戦略、社長室長などを歴任。現在、ソニー執行役員常務、サービスビジネスグループ長、ブランド担当。スポーツ事業などを管轄(photo 写真映像部・東川哲也)
河野 弘(かわの・ひろし)/1962年生まれ。85年入社。本社経営戦略、社長室長などを歴任。現在、ソニー執行役員常務、サービスビジネスグループ長、ブランド担当。スポーツ事業などを管轄(photo 写真映像部・東川哲也)

「スポーツを愛し、アスリートやスポーツ団体の思いも理解する者が事業をやるとなれば、安心感はあるでしょうね。スポーツの力を心から信じています。もっと盛り上げて、ファンに楽しんでもらいたいという気持ちが強い」

 と、彼は、スポーツ界への恩返しを誓う。

 ソニーのスポーツビジネスの推進役は、グループ会社ホークアイ・イノベーションズだ。

 ホークアイの各種サービスは、世界90カ国以上、25種類もの競技で活用されている。とくに、審判判定支援サービスは多くの主要な国際大会で採用されている。たとえばサッカーのVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー=ビデオ判定)がそれだ。

 また、2020年から米国のメジャーリーグで採用されているプレー分析サービスも、その一例だ。画像解析技術とトラッキング(追跡)システムで、球場全体のボールや選手の動き・骨格情報までもとらえてリアルタイムで解析、データ化する。このデータを使い、投手や打者のフォームや投球内容、打球やバットの軌道、野手の動きなど、フィールド上でのすべてのプレーをより精密に確認、評価できるだけでなく、CG映像化も可能だ。サッカーなどでも同様の技術がすでに活用されており、試合の中継放送のほか、メタバースなども含めたエンタテインメントへの活用も期待されている。

 ソニーに入社して38年。東欧革命、ゲーム事業への進出、スポーツ事業の新規展開など、時には翻弄される形で、入社時には全く想像していなかったキャリアを積むことになった。その一つ一つが、現在の彼の血肉になり、新しいソニーらしさを後輩に伝承している。河野はいま、心から仕事を楽しんでいる。当面、愛する博多へは戻れないだろう。

(文中敬称略)(ジャーナリスト・片山修)

>>【前編の記事】ソニー常務は若手時代、どんな働き方だったのか? 27歳で東欧に渡り営業、経理、採用などすべてをこなした

AERA 2022年12月26日号