家族の介護やケア、家事などを担っている子どもが「ヤングケアラー」だ。家族のケアは学校では話しづらく、誰にも悩みを話せず孤立を深めることも少なくない。ケアが学校生活にどのような影響をもたらすのか。ヤングケアラーの実態に迫った。AERA 2022年9月19日号の記事を紹介する。(前後編の前編)
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「みんな経験したことがないから、どうせ言ってもわかんないだろうなみたいな感じで、友だちにはまだ話したことがないです」(認知症の祖父の介護を担う高校2年生・女子)
法令上の定義はないが「本来、大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳未満の子ども」が、ヤングケアラーと呼ばれている。
今年4月、厚生労働省はヤングケアラーの実態調査の結果を発表した。世話をしている家族の有無については、小学6年生で6.5%、中学2年生で5.7%が「いる」と回答。高校2年生、大学3年生では、それぞれ4.1%、6.2%という結果がでている。おおよそ、小中高校の各クラスに1人から2人のヤングケアラーがいることになる。
大人によるケアと、子どもによるケアには大きな違いがある。2007年頃からヤングケアラーについて研究してきた、成蹊大学の澁谷智子教授は、言う。
「大人の介護者とヤングケアラーの大きな違いは、既に持っている経験や知識の量です。大人の場合、ケアの状況を以前の暮らしと比べ、何がどう大変なのかを整理して言語化することも比較的できます。もちろん大人にとっても介護は大変ですが、たとえば仕事や子育てとのバランスを考えて、部分的にはデイサービスを利用しようなどと考えることもできます」
ところが、幼い頃からケアをしてきたヤングケアラーはそもそも「何がケアで、何がそうでないのかがわからない子どもも多い」(澁谷さん)という。さらに子どもは経済的に自立しておらず、情報もないため外部のサービスを頼んで負担を減らすといったことも難しい。
その結果、「自分がとれる狭い選択肢のなかで、時には自分のことを削りながら、できることをやろうとしてしまう」(澁谷さん)のだ。