銃撃された安倍晋三元首相。山上徹也容疑者は奈良県警の調べに「安倍氏も旧統一教会につながりがあると思った」などと話したという
銃撃された安倍晋三元首相。山上徹也容疑者は奈良県警の調べに「安倍氏も旧統一教会につながりがあると思った」などと話したという

 自民党と旧統一教会の関係が、安倍晋三元首相に対する銃撃事件をきっかけに次々と明らかになった。両者を結びつけるものは何か。証言で解き明かす。AERA 2022年9月5日号の「自民党と旧統一教会」の特集記事から紹介する。

*  *  *

 首都圏を選挙区に持つ中堅議員は、自民党が下野した2009年の衆院選で落選後、こう言って、後援会を実質的に解体した例がある。

「あれだけ一生懸命、後援会を作ったのにムダだった」

 その議員は、いま、教団との深い関係が相次いで明らかになっている。

■人手不足で教団と関係

 もちろん中選挙区時代にも、岸信介元首相や中曽根康弘元首相のように教団と関係の濃い大物議員はいた。しかし、それは、現在の若手議員のように自らの弱い選挙基盤を補うものではなく、「日本に共産主義政権を樹立させない」という反共思想での共鳴が大きかった。

 派閥間の力関係もあった。

 自民党の派閥のうち、田中角栄の流れをくむ経世会(現平成研究会)や、池田勇人が創設した宏池会が「本流」とされる一方、岸に連なる清和会は「傍流」とされた。自民党関係者は言う。

「業界や財界など主要な団体は本流に握られ、傍流の清和会は宗教団体に頼るしかなかった」

 岸の孫であり、清和会を引き継いだ安倍氏と教団の関係は、この流れにある。

 しかし、現在、教団との関係が明らかになっている自民党議員は、かつての岸や中曽根のようなイデオロギー的同調も、安倍氏のような歴史的なつながりも薄いだろう。ポスター貼りや戸別訪問、電話作戦などの選挙活動のための人手が乏しい議員が、教団に頼るようになっているのが内実ではないか。

 教団信者が選挙で見せるパワーは随一のようだ。元地方議員の証言で分かる。

 民社党に所属した元地方議員の男性は、1990年代に初出馬した際、教団の支援を受けた。日米安保条約をめぐる対立で社会党から分裂して生まれた民社党は、自民党以上に右派的な議員もいた。それだけに、教団の支援に違和感はなかった。

 民社党は、民間労組の支援が中心だった。男性は言う。

「労組の組合員も活動量は大きいが、教団信者は活動量に加え、活動力が抜群だった」

次のページ