アマゾン配達員組合横須賀支部の50代男性ドライバーは「アマゾンは社会的責任をとってほしい」と訴える(撮影/編集部・野村昌二)
アマゾン配達員組合横須賀支部の50代男性ドライバーは「アマゾンは社会的責任をとってほしい」と訴える(撮影/編集部・野村昌二)

「働き方は会社員と同じ。明らかに偽装請負で、名ばかりフリーランスです」

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 神奈川県横須賀市でフリーランス(個人事業主)としてインターネット通販大手「アマゾン」の配達ドライバーを務める男性(50代)は、そう憤る。日本法人「アマゾンジャパン」の2次下請けの運送会社と業務委託契約を結んで働く。だが、実態はAI(人工知能)を使ったアマゾンのアプリを通じて配達先や労働時間を管理され、「労働者と同じ」と訴える。

 男性が他社を経てアマゾンの配達ドライバーとなったのは2019年3月。報酬は荷物1個当たり160円。1日に配る荷物は110個ほどで、朝8時に配送センターに出勤し、午後8時ごろには帰宅できていた。途中、休憩もゆっくり取れた。しかし、2020年7月ごろ、報酬が荷物1個当たりから1日1万8千円の日当制に変更となった。

 状況が一変したのは昨年6月。アマゾンが配達ルートの選定にAIアプリを導入した。すると荷物は急増し、1日の配達数は今年4月から200個を超えることが常態化したという。配達を終え帰宅できるのは夜の10時か11時近く。休憩時間を満足に取れない日もあった。

 だが、どれだけ働いても報酬は1万8千円のまま。月3万円近いガソリン代のほか、電話代や車の維持費も自己負担だ。割り当てられた荷物を断ることはできないという。

 このままでは過労で倒れるか事故を起こしてしまう――。

 男性は同じ配送センターで働く配達ドライバーたちに労働組合の結成を呼びかけた。今年6月、同じ思いを持つ10人ほどで「アマゾン配達員組合横須賀支部」を結成。アマゾンと下請け会社に働き方の改善を求めている。

 それぞれのドライバーはアマゾンと直接の契約関係はない。だが、アプリなどを通し働き方の指揮命令を受けていることからアマゾンに「使用者」としての責任があると組合は主張している。男性は言う。

「僕たちドライバーは倒れそうになりながら毎日12、13時間働いている。しかし、どんなに働いても残業代もガソリン代も出ない。個人事業主であるドライバーを社員のように使っているのであれば、労働者として契約するべきです」

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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