2019年、シャーク湾のストロマトライトの前で。地球に酸素をありがとう(写真:本人提供)
2019年、シャーク湾のストロマトライトの前で。地球に酸素をありがとう(写真:本人提供)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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「地球上で最大の植物、オーストラリア西岸のシャーク湾で発見。4500年かけて180キロに広がる」

 なんとこのほど、たった一株の海草が200平方キロメートル、サッカー場2万個分もの面積にわたって広がっていることが判明しました。

 シャーク湾は世界自然遺産にもなっている珍しい自然の宝庫。私も2019年に家族と訪れました。一帯は広大な遠浅で、湖のように穏やかです。水は極めて透明度が高くきれいですが、場所によっては非常に塩分濃度が高いので、その環境に適応した生物しか生きていけません。地形や湾内に生い茂る海草が潮の流れに影響することによって、そうした特殊な環境になったのだそうです。野生のイルカやエイが浜のすぐ近くまで泳ぎ寄ってくる入り江や、ジュゴンの群れ、数千年かけて貝殻が台地のように堆積してできた純白のシェルビーチ、数十億年前の原始の地球でコツコツと酸素を吐き出してくれたストロマトライトの希少な生息地など、豊かな自然に触れることができます。私たちもそんな旅を堪能したのですが、まさかあの透き通った水の下に広がっていた海草の森が、遥か昔の一粒の種から成長したものとは思いもしませんでした。生命とは本当に不思議で力強いものですね。

エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子

 シャーク湾は西オーストラリア州の州都パースから北へ800キロほどのところにあります。パースから飛行機で数時間、または数日かけて車で行く人もいます。遠いですが、それだけの時間をかける価値のある、美しい場所です。

 実はシャーク湾は、日本で暮らす人にとって身近な場所でもあります。スーパーで売っているお馴染みの美味しいお塩の袋、よーく見てみてください。産地に「オーストラリア(シャーク湾)」と書いてあります。土俵にまかれたりもしているようです。地球は一つ、つながっていますね。

◎小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。寄付サイト「ひとりじゃないよPJ」呼びかけ人。

AERA 2022年6月20日号

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小島慶子

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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