生田斗真の俳優としての快進撃が続いている。6月8日には舞台「てなもんや三文オペラ」が開幕し、16日にはNetflixドキュメンタリーが配信される。その原動力はなんなのか。AERA 2022年6月13日号から。

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――差別と貧困を描き、資本主義を痛烈に批判したブレヒトの音楽劇の名作「三文オペラ」。それを大胆にアレンジした「てなもんや三文オペラ」が6月8日に幕を開ける。1950年代の大阪を舞台に、屑鉄を売りさばく盗賊団の親分マックを演じる。

生田斗真(以下、生田):「三文オペラ」が、作・演出を手がける鄭義信さんの世界観とアレンジでどんな脚本になるのか、僕自身楽しみにしていたんです。いただいた脚本を読むと、舞台が大阪に変わっていて、セリフも関西弁であることにまず驚きました。鄭さんは「三文オペラ」に登場する盗賊団のメンバーと、戦後の大阪にあったバラック街にたむろしていた人間たちには重なる部分がある、と。

 いつの世も、異端でエネルギッシュな人たちが時代を変え、また新たな世界を生み出してきたんだ、と素直に思いましたし、大胆なアレンジであっても根の部分ではつながっている。そんな設定に面白さを感じました。

■やり取りが面白い

――脚本を、体を使って立体的に立ち上げていく。そのプロセスで大切にしていることは何か。

生田:稽古がすべてだと思いますし、せっかく手練れたちが集結し、作品を作りあげるのだから、意見を出し合い、探り合いながらつくっていけたら、という気持ちがあります。でも、同時に、「一回の本番にはかなわない」という思いもありますね。「なんだかうまくいかない」と感じていたシーンでも、足りないなと思っていたパーツを本番でお客さんが埋めてくれることもある。特に客席から笑いが起こると、それを如実に感じます。客席からの反応によって、芝居がドライブし、前へ前へと進む推進力になる。その逆も然りで、「よーし、このシーンはいいぞ」と稽古では自信を持っていたのに、舞台に立ったとたん「あれ? 全然ウケないな」ということもある(笑)。舞台はそんなやり取りが面白いですね。

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